このアルバムの3つのポイント
- カール・ベーム×ウィーンフィルの理想的な「田園」
- 穏やかで牧歌的な音楽と、第4楽章で見せる厳しい表現
- エジソン賞受賞
カール・ベーム の没後40年
今年2021年は、20世紀を代表する指揮者の一人、カール・べーム(1894年〜1981年)の没後40周年にあたり、レコード業界ではそれを記念してカール・ベームのレコーディングの再発売が予定されています。ドイツ=オーストリア音楽を得意とし、日本でも熱狂的なフィーバーとなったベームですが、彼が指揮したレコーディングを聴くと決して情に流されない普遍的な音楽を聴いている気分になります。
ベームが遺した録音の中で、私は特に1973年に録音されたブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」が一番気に入っていますが、あんなにまろやか音色で聴けるブルックナーは今でも色褪せない演奏だと思います。
カール・ベーム ×ウィーンフィルのベートーヴェン交響曲全集
さて、カール・ベームは1970年代にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集を録音しています。こちらも定評のある演奏ですし、これとは別テイクの1980年の最晩年のウィーンフィルとの第九の録音もあり、こちらの記事で紹介しましたが、非常にテンポがゆっくりとした悠久の演奏になっています。
今回紹介するのは、交響曲全集の中から、交響曲第6番「田園」の録音。1971年5月にウィーンフィルの本拠地、ウィーン楽友協会・大ホール(ムジークフェラインザール)で録音されたものです。こちらはオランダの「グラミー賞」とも評されるクラシック音楽の賞「エジソン賞」を受賞しています。
私は、2009年にユニバーサルミュージックからリリースされたルビジウム・カッティングでの “The Originals” シリーズでこのベームとウィーンフィルの「田園」の録音を聴いていますが、2020年にはユニバーサルミュージックから UHQCD x MQA-CD の高音質のレコーディングもリリースされてます。交響曲全集だと音質は普通のCDになってしまうので、分売でリマスタリングされた高音質CDで聴くほうが良いかと思います。
まろやかな牧歌的な演奏
この「田園」の録音は、この曲の最高の演奏だと今でも思います。ウィーンフィルの各楽器の豊かな音色も素晴らしいですが、それらが重なり合ってハーモニーを生み出しているところは奇跡としか言いようがない美しさです。
第1楽章ののどかな演奏、第2楽章の穏やかで美しい演奏も素晴らしいし、第3楽章の優雅な曲想もまた良いのです。
カール・ベーム の意外な側面、厳しい第4楽章
第4楽章は嵐が訪れ、これまでののどかな情景から一転しますが、ここでカール・ベームとウィーンフィルはオペラのような引き締まった迫力で演奏していきます。
そして切れ目なく続く第5楽章では、再び伸びやかで牧歌的な演奏に戻ります。ウィンナ・ホルンの柔らかい響きも良いですし、それに続くヴァイオリンの音色が何とも美しいこと。
まとめ
ベートーヴェンの交響曲「田園」の中で最もスタンダードで、最も素晴らしいと思うのがこのカール・ベームとウィーンフィルの黄金コンビによるレコーディング。「田園」は色々聴きましたが、今でもこの演奏は色褪せないです。
オススメ度
指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1971年5月, ウィーン楽友協会・大ホール
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受賞
1971年のオランダのエジソン賞を受賞。
コメント数:1
カール・ベーム。私が最も好きな指揮者。
彼が指揮をすると音楽に格調とスケールが加わります。ハイドン然りモーツァルト然り。ベートーヴェンももちろん例外ではありません。
私は第2、第4、第6は他の追従を許さぬ名演だと思います。中でも第6は抜きん出た超名演。
絶妙なテンポの上に音符一つ一つが有機的に繋がっていて、これらが(恐らく天与の)確固たるリズム感で構成されるので、もたらされる安定感は唯一無二。聴き手は安心して田園の世界に身を委ねることが出来ます。
一見(聴)、外観的には無個性に見えるのですが、聴き終えた後の何とも言えない充実感。これは他の指揮者からは得られません。
全くオーソドックスなアプローチで、人を驚かせるような表現は何一つ無いのに、これだけの感動を与えるというのは本当に凄いと思います。
ベートーヴェン以外にもモーツァルトの38番以降、ブラームスの第1番と第2番、ブルックナーの第4などなど。聴くべきところが多い指揮者ですし、指揮という行為のもたらすものについて考えさせられます。