このアルバムの3つのポイント
- ラファエル・クーベリックとバイエルン放送響の1965年来日公演!
- NHK音源から蘇ったブルックナー交響曲第8番とベートーヴェンの「田園」
- 両翼配置による厚みのあるヴァイオリン
クーベリックの1965年来日公演がNHK音源から蘇る
クラシック音楽ファンに嬉しいCDが発売されました。ラファエル・クーベリックとバイエルン放送交響楽団による来日公演で、1965年4月12日と13日に大阪のフェスティバルホールでのライヴ録音がNHKが所有する音源から、Altusレーベルがリマスターしてリリースされたものです。
Altusレーベルについては、今回初めて知ったのですが、2000年に設立されたクラシック音楽中心のレーベルでトーメイ電子株式会社の音楽事業部が運営しています。古い音源の発掘や新録音も扱っているそうで、販売はキングインターナショナルがおこなっているとのこと。
参考:http://www.altusmusic.com/aboutus/
以前の記事でシューマンの交響曲全集の中で私が一番好きなのはクーベリック指揮ベルリンフィルの全集だということを書きました。あれは1963年〜1964年の録音なのですが、その翌年に来日していたのですね。
現代の演奏と往年の演奏を
クラシック音楽の最近の演奏家の演奏ももちろん聴いているのですが、近年では指揮者ではクラウディオ・アバドもマリス・ヤンソンスも亡くなってしまい、ベルナルト・ハイティンクも引退。現在活躍しているのはリッカルド・ムーティ、クリスティアン・ティーレマン、サイモン・ラトル、リッカルド・シャイー、アンドリス・ネルソンスなどなどいますが、新しい演奏を聴いても「あれ?」と思うこともやはりあります。
クラシック音楽の良さは往年の名演奏が今でも聴けること。遠慮なく過去にさかのぼって良いんです。1940年代まで行くと音質が悪すぎて聞くに堪えられませんが、1950年代半ばや1960年代からは音質もマシになっていて、今では聴けない印象的な演奏も多く、やはり過去の演奏を発掘するのもクラシック音楽の楽しみと言えるでしょう。今回、クーベリックの1965年の来日公演が初リリースとなったことに俄然、期待が高まります。
フェスティバルホールでのブル8と「田園」
CD2枚組で、1枚目が4/12のブルックナーの交響曲第8番、そして2枚目が4/13のベートーヴェンの交響曲第6番「田園」です。2001年にAltusレーベルからリリースされているCDで、4/12のヴァーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の前奏曲、4/13のバルトークの管弦楽のための協奏曲、アンコールのドヴォルザークのスラヴ舞曲第2番、第7番が収録されていましたが、今回のCDで4/12と4/13のフェスティバルホールの演奏会のピースが埋まりました。
2001年のCD(品番#ALT8)ははとっくに廃盤になっていますが、2021年3月にALT472がリリースされ、こちらではさらに1965年4月のバイエルン放送響との東京文化会館でのライヴ録音や、1991年11月のチェコフィルとのサントリーホールのライヴ録音も収録されています。私も後で買ってみたいと思います。
両翼・対向配置
発売元のキングインターナショナルの説明によると、バイエルン放送響の配置は「両翼配置」だったそうです。「対向配置」とも言われます。
現代のオーケストラの多くでは、指揮者から見て左側に第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、そして一番右側がチェロとなります。ヴィオラの右後ろにコントラバスがいます。それに対して、戦前までのオーケストラでは「両翼配置」と呼ばれるものが主流で、左側から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、そして右側に第2ヴァイオリンが配置され、チェロの左後ろにコントラバスがいます。
ブルックナーの第8番 第2槁ハース版
クーベリックはセッション録音ではブルックナーの交響曲第8番を録音していませんが、演奏ではしばしば取り上げていて、ライヴ録音では他に1963年8月(バイエルン放送響)、1966年12月(シカゴ響)、1977年5月(バイエルン放送響)があるそうです。新たに1965年4月のライヴ録音が加わったのは貴重です。ブルックナーの交響曲はどの版を選ぶかで演奏が変わってきますが、クーベリックはハース版をチョイス。この第8番でも第2槁に基づくハース版に準拠しているそうです。
バイエルン放送響のスッキリとしたハーモニーで緊張感ある演奏。第3楽章はため息が出てしまうほど美しいです。
第4楽章は冒頭の「nicht schnell (速くならないで)」を守った演奏なので、安心して聴けます。最近出たアンドリス・ネルソンスとゲヴァントハウス管の2019年の録音ではここを堂々と信号無視をするかのように急速に速くしていたのでがっかりしてしまったのですが、クーベリックとバイエルン放送響の演奏はそんなことないです。
ただ、バイエルン放送響はそこまでパワフルでは無いので、金管は物足りなさを感じるかもしれません。クライマックスでは速めのテンポで混沌とした世界を描き、そして最後のソー、ミレ♭ドも一気に駆け込み、ティンパニも見事に決まっています。
美しさの饗宴の「田園」
「田園」でも、スッキリとしたバイエルン放送響の弦が特徴的ですが、両翼配置で演奏することによってヴァイオリンの厚みが増して聴こえます。新たな発見です。目をつぶって聴くと左側からも右側からもヴァイオリンの音色が聞こえます。
嵐が来る第4楽章も迫力がありますが、何と言っても喜びに満ちた第5楽章がとにかくすごいです。美しさの饗宴と言える演奏でしょう。音質も良好で、NHKでの保存状態も良かったのだと思いますが、今聴いても全然気になりません。
まとめ
ラファエル・クーベリックとバイエルン放送交響楽団の貴重な1965年4月の来日公演。ブルックナーの交響曲第8番も良かったですが、何よりも「田園」が素晴らしい出来です。良いものを聴けました。
オススメ度
指揮:ラファエル・クーベリック
バイエルン放送交響楽団
録音:1965年4月12日(ブルックナー), 4月13日(ベートーヴェン), フェスティバルホール(ライヴ)
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試聴
特に無し。
受賞
特に無し。
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