イギリスのバーミンガム市交響楽団と言えば、今では世界的なオーケストラの1つとして認知されていますが、その立役者となったのが、1980年から1998年にかけて主席指揮者(1980年〜)と音楽監督(1990年〜)を務めた、サイモン・ラトル。ラトルがバーミンガム市響を一流へと育てたと言っても過言ではないでしょう。そして1998年から2008年にかけてサカリ・オラモの時代になり、2008年から2015年までは、今最も勢いのある指揮者、アンドリス・ネルソンスがそのポジションにいました。

ラトルやアンスネスといった世界トップクラスの指揮者を輩出するオーケストラとして、バーミンガム市響は重要な位置にいます。

こちらのFC2ブログの記事に書きましたが、2016年からバーミンガム市響の音楽監督を務めているのが、当時29歳だったリトアニア出身の女性指揮者、ミルガ・グラジニーテ=ティーラ。この若さで音楽監督をするのもすごいですが、世界的なオーケストラを率いる女性指揮者は珍しいので、注目していました。

バーミンガム市交響楽団の音楽監督を務めているミルガ・グラジニーテ=ティーラ
バーミンガム市交響楽団の音楽監督を務めているミルガ・グラジニーテ=ティーラ
【タワレコ】ミルガ・グラジニーテ=ティーラ/バーミンガム市響 ザ・ブリティッシュ・プロジェクト(CD)

バーミンガム市響の公式サイトに本日(2021年1月22日)発表がありましたが、ミルガ・グラジニーテ=ティーラとの契約を1年だけ延長し、その後は主席客演指揮者になってもらう予定とのこと。

【バーミンガム市響の公式サイト】Mirga Gražinytė-Tyla extends contract with the CBSO

この中に、ミルガ・グラジニーテ=ティーラのコメントがあり、1年だけ延長した理由が書かれています。

I have decided to give up my position of Music Director of the CBSO at the end of the 2021/22 season and have happily accepted the orchestra’s invitation to become Principal Guest Conductor in the 2022/23 season. This is a deeply personal decision, reflecting my desire to step away from the organisational and administrative responsibilities of being a Music Director at this particular moment in my life and focusing more on my purely musical activities. 

ミルガ・グラジニーテ=ティーラのほうからギブアップしたとのこと。音楽監督というポジションだと組織をどうするか、管理をどうするか、という音楽以外の仕事があり、それにわずらわされるよりも純粋に音楽的な活動に専念したいから主席客演指揮者というポジションに移りたい、と書いてありますね。

同じような悩みは往年の指揮者も抱いていました。例えば、レナード・バーンスタインは1969年までニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務めていましたが、作曲の時間を多く取るために特定のポストに就かず、その後は客演指揮者としてヨーロッパやアメリカなどのオーケストラで活躍しました。また、カルロ・マリア・ジュリーニも1984年に夫人の病気のためにロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督を退任して以降は、演奏活動をヨーロッパ内に制限し、特定のオーケストラのポジションには就かず、フリーの指揮者として名門オーケストラに客演していました。

一方で、ヘルベルト・フォン・カラヤンは1980年代後半から団員の入団を巡って当時音楽監督を務めていたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との関係が悪化し、それを避けるようにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏が目立つようになりましたね。バーンスタインやジュリーニは、客演指揮者として音楽に専念できたので、あれだけの名演が実現できたのかもしれません。

まだまだ34歳という若い指揮者ですので、じっくりとより成長していけば良いと思います。ミルガ・グラジニーテ=ティーラのこれからの活躍に期待したいです。

※2021/04/12更新

ミルガは2021年3月26日にドイツの名門オーケストラ、バイエルン放送交響楽団にデビューしました。ヘラクレス・ザールでの無観客公演の映像が無料で公開されています。詳細はこちらの記事をご覧いただければと思います。

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