ノーマンに魅了、整ったバランスのハイティンク/ドレスデンのベートーヴェン歌劇『フィデリオ』(1989年)

ベートーヴェン歌劇『フィデリオ』 ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン(1989年)

このアルバムの3つのポイント

ベートーヴェン歌劇『フィデリオ』 ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン(1989年)
ベートーヴェン歌劇『フィデリオ』 ベルナルト・ハイティンク/シュターツカペレ・ドレスデン(1989年)
  • ベルナルト・ハイティンクの『フィデリオ』の録音
  • ハイティンクらしいバランス感覚の整った演奏
  • ジェシー・ノーマンの歌声に魅了

オランダ出身の指揮者ベルナルト・ハイティンクは若くしてロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就き、1988年まで務め、その間にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者も兼任。その後もウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との客演、1995年からはボストン交響楽団の首席客演指揮者、2006年からはシカゴ交響楽団の首席指揮者も務め、欧米の主要オーケストラの指揮台に立ってきました。

往年の名指揮者、例えばヘルベルト・フォン・カラヤンや、レナード・バーンスタインゲオルグ・ショルティカルロ・マリア・ジュリーニカルロス・クライバーあたりはオペラもよく指揮していた印象があります。カラヤンだったら『トスカ』や『カヴァレリア・ルスティカーナ』あたり、バーンスタインだと『フィデリオ』や『トリスタンとイゾルデ』、ショルティだと『ニーベルングの指環』、『魔笛』、『椿姫』、ジュリーニだと『リゴレット』や『ファルスタッフ』、クライバーだと『魔弾の射手』、『こうもり』、『ばらの騎士』がピンと思い浮かびます。

さて、ハイティンクはというと、正直あまりオペラの印象がありません。私にとってはブルックナーやマーラーの交響曲のようなコンサート指揮者としての印象が強いです。

ただ、ハイティンクは1987年から2002年まで英国のロイヤル・オペラ・ハウス(コヴェント・ガーデン歌劇場とも呼ばれます)の音楽監督も務めていますし、急逝したジュゼッペ・シノーポリの後任として2002年にシュターツカペレ・ドレスデン(ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とも呼ばれます)の首席指揮者に就任し、短期間でしたが2004年まで務めました。

ハイティンクもオペラを指揮していたのです。

今回紹介するのは、ハイティンクとシュターツカペレ・ドレスデンの『フィデリオ』のレコーディング。1989年11月の聖ルカ教会でのセッション録音です。

ハイティンクの『フィデリオ』の録音は他にも、1979年のグラインドボーン音楽祭でロンドンフィルを指揮したライヴ映像作品や、2008年10月にチューリヒ歌劇場でのライヴ映像作品もあります。この2つは視聴したことが無いので、聴き比べた違いなどは分かりません。

私はこのハイティンク/ドレスデンの『フィデリオ』のCDのうち、2010年にリリースされたDecca Opera! (型番4782485)を持っています。発売されて間もないときに、タワーレコードの渋谷店で見つけて、フランスのトリコロールカラーを使ったアルバム・ジャケットに惹かれて「ハイティンクのオペラを聴いてみよう」と思って購入しました。残念ながらこちらは廃盤になっています。

2012年にリリースされたDeccaの型番4784139のCDも廃盤です。なかなか1980年代から90年代の録音は、タイミングが合わないとCDでは入手しづらいですね。iTunesなどのストリーミングだといつでも聴けるので、クラシック音楽の流れも非媒体に加速していくのでしょうか。

ハイティンクと言えば、抜群のバランス感覚で各楽器の旋律を弾き分け、まるでペルシャ絨毯のように緻密な音楽を作るところが特徴だと思いますが、そのアプローチがこのオペラでも十二分に発揮されています。有名な序曲から鮮やかな色彩で描いています。セッション録音ということもあり、ハイティンクもあまりのめり込まないで客観的に描いている感じもします。例えばバーンスタインがウィーン国立歌劇場で指揮したような熱狂的なアプローチを好む方には物足りないかもしれません。第1幕冒頭での扉を叩くような音も、優しくコンコンとノックしているような感じで、バーンスタインが指揮したときのように荒々しくドンドンと叩くようなノックとは趣がだいぶ異なります。

この『フィデリオ』の魅力は何と言ってもソプラノのレオノーレ役のジェシー・ノーマンでしょう。気品があるソプラノの歌声にすっかり魅了されてしまいます。スッキリとしたオーケストラのサウンドも相まって、ノーブルなオペラにまとまっています。

コンサート指揮者の印象が強いベルナルト・ハイティンクのオペラでの指揮を楽しめるレコーディング。カラフルで丁寧な色使いで客観的に描かれていくオーケストラの演奏にはオペラのような躍動感はあまりしませんが、ジェシー・ノーマンの歌声に魅了された『フィデリオ』でした。

オススメ度

評価 :3/5。

レオノーレ役(ソプラノ):ジェシー・ノーマン
フロレスタン役(テノール):ライナー・ゴールドベルク
ロッコ役(バス):クルト・モル
ヤキーノ役(テノール):ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ
指揮:ベルナルト・ハイティンク
シシュターツカペレ・ドレスデン&ドレスデン国立歌劇場合唱団
録音:1989年11月, ドレスデン・聖ルカ教会

廃盤のため無し。

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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