丁寧に歌い上げた原点回帰 カルロ・マリア・ジュリーニとロスフィルのブラームス交響曲第1番、第2番(1980-81年)

カルロ・マリア・ジュリーニ イン アメリカ ロサンゼルス・フィルハーモニック

このアルバムの3つのポイント

カルロ・マリア・ジュリーニ イン アメリカ ロサンゼルス・フィルハーモニック
カルロ・マリア・ジュリーニ イン アメリカ ロサンゼルス・フィルハーモニック
  • ジュリーニのロサンゼルス時代のブラームス
  • のびのびと
  • 丁寧にディテールまでこだわった原点回帰の演奏

イタリア出身の名指揮者カルロ・マリア・ジュリーニは、1970年代からアメリカのオーケストラ、特にシカゴ交響楽団ロサンゼルス・フィルハーモニックとの活動が多くなります。

シカゴ響とは1969年に首席客演指揮者に就き、サー・ゲオルグ・ショルティが音楽監督として黄金時代を迎え始めていたこのオーケストラから、ショルティとは別の魅力を引き出してきました。首席客演指揮者のポジションは1972年で終わったようですが、その後も名盤として名高い1976年のマーラーの交響曲第9番の録音など、関係は続きました。

ロスフィルについては、1978年にズービン・メータの後任として、音楽監督に就任し、1984年までその任に就きました。1978年に録音されたベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」についてはこちらの記事に、1978年と79年にクリスチャン・ツィメルマンとのショパン ピアノ協奏曲全集の録音についてはこちらの記事に紹介しました。

ジュリーニのブラームスと言えば、1961年から68年にかけてのフィルハーモニア管弦楽団との全集(FC2ブログ記事)や、1989年から91年にかけてのウィーンフィルとの録音(FC2ブログ記事)があります。どれも違った趣なので聴き比べるとジュリーニの変遷を味わえます。

ロスフィルとのブラームスの交響曲録音は、私は2010年7月にリリースされたCD6枚組のGiulini in Americaのロスフィル編で聴いていますが、デジタル録音とは言え、音質がこもって聞こえるところもあります。2019年4月に日本国内版で交響曲第1番と第2番がそれぞれSHM-CDで分売されているので、そちらのほうが高音質が期待できそうですね。

ジュリーニとロスフィルによるブラームスの交響曲第1番ハ短調 Op.68の録音は、1981年11月のもの。ロサンゼルスのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のキャンパスにあるロイス・ホールでのセッション録音です。

ブラームスが最初の交響曲を完成するまで20年近く掛かり、交響曲として作曲したものをピアノ協奏曲第1番として変えてしまったなどのエピソードもよく知られています。だからこそ、この曲の冒頭を重々しく始める演奏が多く、特にティンパニを執拗に叩く演奏もあります。

しかし、ジュリーニとロスフィルは意外にもあっさりと進めていきます。

確かに楽譜を見るとUn poco sostenuto (少し音を保持して)の全体指示、そして強弱はf(フォルテ)のみ。さらにヴィオラにはespress (エスプレシーヴォ、表情豊かに)、コントラバスにはpesante(重々しく)の指示になっています。ティンパニにはf(フォルテ、強く)の指示だけです。ジュリーニはこれまでの習慣ではなく、楽譜の原点に回帰したように思えます。さらっと始めてからはロスフィルが丁寧にハーモニーを作っていきますが、あまり指揮者の思い入れは入っていません。

10年後のウィーンフィルとの第1番の録音(FC2ブログ記事)ではよくオーケストラが辛抱できたなと思うほど遅いテンポで進めたジュリーニ。あのときは第1楽章のリピートを省略していましたが、このロスフィルでは忠実に繰り返しをおこなっています。

「この曲はこう演奏すべき」という伝統が強いヨーロッパの名門オーケストラに比べて、相対的に歴史の浅いアメリカのオーケストラは比較的柔軟に演奏する傾向がありますが、ジュリーニもロスフィルと演奏する際に伝統にとらわれずに楽譜の原点に立ち返ったのかもしれません。

レコードショップのこのCDの商品説明では「ディテールの隅々まで細心の注意が払われた入念な演奏」と書いてありますが、楽譜を見ながら聴いてみると確かにジュリーニとロスフィルは楽譜どおりの演奏を心掛けているように感じます。

演奏時間は第1楽章が19:00、第2楽章が10:33、第3楽章が5:09、そして第4楽章が18:35です。

第1楽章の最後の17小節ではMeno Allegroのテンポに変わりますが、ここでジュリーニならではの歌心やたっぷりとした間合いの取り方が出ています。

ロスフィルは、アメリカの中でもビッグ5(シカゴ響、ボストン響、ニューヨークフィル、クリーヴランド管、フィラデルフィア管)に比べるとレベルは下がるかもしれません。ロスフィルも確かに上手いのですが、「さすがだな」と感じるところは無かったです。ただ、第2楽章や第3楽章では弦(第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ)とオーボエが特に美しいと思いました。

ブラームスの交響曲第2番ニ長調Op.73のほうが先の録音で、1980年11月にシュライン・オーディトリアムでのセッション録音されたものです。牧歌的な作品なので、ジュリーニの柔らかい音楽作りが合うのはこちらのほうでしょう。

演奏時間は第1楽章が22:36、第2楽章が10:43、第3楽章が5:45、第4楽章が9:46です。

ロスフィルからふくよかな響きを引き出していて、オーボエ、クラリネット、フルートなどの木管が特に良く聞こえます。

カルロ・マリア・ジュリーニがロサンゼルス時代に録音したブラームスの2つの交響曲。旋律の歌わせ方などジュリーニらしさも少しはありますが、後のウィーンフィルとの再録音と比べると全く違うオーソドックスな演奏なので、あまり個性は感じないかもしれません。

オススメ度

評価 :3/5。

指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
ロサンゼルス・フィルハーモニック
録音:1980年11月, シュライン・オーディトリアム(交響曲第2番)
1981年11月, ロイス・ホール(交響曲第1番)

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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