このアルバムの3つのポイント
- アンドリス・ネルソンスとゲヴァントハウス管の2019年5月のライヴ
- バイバ・スクリデがソロを務めたモダンなショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲
- 機動性の高いチャイコフスキーの交響曲第5番
2019年5月のアンドリス・ネルソンス指揮ゲヴァントハウス管のコンサート
アンドリス・ネルソンスはカペルマイスターを務めるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と、ブルックナーの交響曲全集の録音を進めていますが、並行してチャイコフスキーの後期交響曲3つの映像作品での収録も2018年から2019年にかけておこいました。2018年3月の交響曲第6番「悲愴」のレビューと2019年12月の交響曲第4番のレビューは既に紹介していますので、今回は2019年5月におこなわれたコンサートでの交響曲第5番を中心とする演奏会のレビューを書きたいと思います。
2019年5月17日と18日にゲヴァントハウスでおこなわれたコンサートで、曲目は以下のとおりです。
- ショスタコーヴィチ作曲:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 Op.77 (ヴァイオリン独奏:バイバ・スクリデ)
- (アンコール)ストラヴィンスキー作曲:ヴァイオリン独奏のための「エレジー」
- チャイコフスキー作曲:交響曲第5番 ホ短調 Op.64
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番
ヴァイオリン独奏はバイバ・スクリデ(Baiba Skride)が務めました。最初、「バイバ・スクライド」と読むのかなと思いましたが、調べてみるとナクソスやタワーレコードのアーティスト紹介のページで「バイバ・スクリデ」と載っていたので、この記事でもそれに倣うことにします。スクリデはアンドリス・ネルソンスと同じラトビアの首都リガ出身のヴァイオリニストで、1981年生まれなので1978年生まれのネルソンスと年も近いですね。こうして同郷のアーティストがライプツィヒのゲヴァントハウスという大舞台で協演するのは印象的だったことでしょう。
演奏はとてもモダンで、どうも無機質な感じがしましたが、こういう作品だからでしょう。スクリデのヴァイオリンもうまいのですが、少し堅いというか真面目すぎる感じがして、演奏中も表情がずっと険しくて「遊び」が無かったですね。重たいショスタコーヴィチでした。ネルソンス指揮のゲヴァントハウス管も機動性が高い演奏ですが、ネルソンスとなら同じく音楽監督を務めているボストン交響楽団のほうが音色がショスタコーヴィチに合っているので、また違うコンビで聴いてみたいと思いました。
ストラヴィンスキーの「エレジー」
拍手に応えて、スクリデはアンコールでストラヴィンスキーが作曲したヴァイオリン独奏のための「エレジー」という作品を演奏しました。音自体は穏やかなのですが、ずっと緊張感漂う作品で、ショスタコーヴィチの重たいヴァイオリン協奏曲の後に聴くとお腹いっぱいで、安らぎが欲しくなりますね。ここでもスクリデの表情は曇っていましたが、演奏後にようやく笑っていましたね。
チャイコフスキーの交響曲第5番
そして目玉のチャイコフスキーの交響曲第5番。ここではゲヴァントハウス管の豊かな響きが堪能できます。第1楽章ではネルソンスも指揮をするのを止めてオーケストラから自発的にハーモニーを引き出させたりして、色々と「遊び」がありました。
ここでもゲヴァントハウス管の機動性高い演奏で、中間楽章の豊かな響きも良かったのですが、2018年3月の「悲愴」の演奏ほどの感動は無かったですね。この後の2019年12月の交響曲第4番と同じように、どこかまだネルソンスの中で手の内化していない印象を抱きました。特にチャイコフスキーの交響曲第5番は一番深遠な作品なので、後年にまたネルソンスの指揮で聴いてみたいです。
まとめ
重たいショスタコーヴィチとストラヴィンスキーの作品を並べた前半と、一息付けるチャイコフスキーの後半のプログラム。ゲヴァントハウス管が得意とする作品ではないかもしれないですが、ロシア作品で固めてネルソンスによって機動性が引き出された演奏会でした。
オススメ度
ヴァイオリン:
指揮:アンドリス・ネルソンス
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
録音:2019年5月17, 18日, ゲヴァントハウス(ライヴ)
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特に無し。
受賞
特に無し。
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