このアルバムの3つのポイント
- ショルティとシカゴ響の唯一のRCAレーベルでの録音
- 怒涛のオーケストラとソプラノのレオンタイン・プライス
- 米国グラミー賞受賞!
デッカ専属だったショルティがRCAレーベルで録音を
デッカ専属だったショルティが、RCAレーベル(現ソニー・クラシカル)にシカゴ響と1回だけ録音をおこないました。それが今回紹介する1977年6月のヴェルディの「レクイエム」です。
ショルティ自身は、他にもRCAレーベルで録音したことがあって、例えば1963年6月にRCAイタリア・オペラ管弦楽団とヴェルディの歌劇「リゴレット」を録音(FC2ブログ記事)しています。
ただ、ショルティ&シカゴ響と言えばデッカ・レーベルの代名詞のような感じがしますので、RCAでの録音はとても貴重。ましてや、デッカではヴェルディの聖歌四篇の録音(1977年5月、1978年5月)はありますが、レクイエムはありませんのでどう演奏したのか気になって2016年9月にCD再発売時に購入してみました。
ショルティのヴェルディのレクイエム
ショルティのヴェルディのレクイエムは、1958年のケルン放送交響楽団との録音(FC2ブログ記事)や1967年のウィーンフィル盤(FC2ブログ記事)もあり、緊迫感と安らぎの両面を持つ演奏で、「怒りの日」では、金管とティンパニが強烈で、大地が怒り狂うような激しい演奏でした。ヴェルディのレクイエムは他の演奏家も聴きましたが、これほど怒っている演奏はショルティぐらいな気がします。
オペラばりの迫力
このシカゴ響との演奏は、まるでオペラを聴いているかのような迫力。ウィーンフィル盤と作品の解釈はほぼ同じですが、オーケストラがシカゴ響に変わったことで、ヴァイオリンの速弾きではより速くなっていますし、シカゴ響の名技が際立っています。
レオンタイン・プライスの温かみのある声に魅了
そして何よりも印象的だったのがソプラノのレオンタイン・プライス(レオンティン・プライスとも)。米国出身のソプラノ歌手で、様々な国際舞台で活躍して、ヘルベルト・フォン・カラヤンとも1963年のウィーンフィルとの『トスカ』の録音でトスカ役を歌っています。ショルティとは1961年のローマ歌劇場管との『アイーダ』の録音でも協演しています。
このレクイエムのCDを聴き直したときに、耳が覚えていたようで「このソプラノの声は、ショルティのアイーダの録音のときのアイーダ役と同じだ」と思ったのですが、演奏家情報を見ると本当に同じ人でしたね。温かみのある声で、感情表現に長けたソプラノ歌手だと思います。このレクイエムではレオンタイン・プライスの歌声にただただ魅了されてしまいました。
デッカとの違い
このレコーディングはRCAレーベルですが、ショルティはデッカレーベル専属。特にアナログ時代の音質に定評のあるデッカと比べると音作りに違いが感じられます。メディナ・テンプルはシカゴ響がよくレコーディングに使った場所ですが、同時期の1978年〜79年にこの場所でショルティ&シカゴ響がデッカで録音したのがブラームスの交響曲全集。引き締まった演奏で緩徐楽章での美音も見事でしたが、そのときには音質についてはあまり抵抗がありませんでした。
ただ、このレクイエムでは、第1曲からモヤモヤした雰囲気の中にザワ、ザワとノイズが入り、そしてコーラスが美しく入ってきます。CDの注釈に「アナログ音源につき録音年代相応のノイズ等がございます。ご了承ください。」と書かれていますが、静寂なフレーズではノイズが気になります。
私が持っているのは2016年9月リリースのSICC2031ですが、「24ビット・マスタリング日本初CD化」と謳っていますがリマスタリング時のノイズ除去が甘い気はします。音楽が大音量で盛り上がってくると全く気にならないのですが、特に第1曲の立ち上がり時に気になります。
まとめ
ショルティとシカゴ響が唯一RCAレーベルで録音した、ヴェルディのレクイエム。シカゴ響の黄金時代の演奏で怒涛のような表現力も見事ですが、何よりもレオンタイン・プライスの歌声に魅了された1枚でした。
オススメ度
ソプラノ:レオンタイン・プライス
メゾ・ソプラノ:ジャネット・ベイカー
テノール:ヴェリアーノ・ルケッティ
バス:ジョゼ・ヴァン・ダム
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
シカゴ交響楽団合唱団(指揮:マーガレット・ヒリス)
録音:1977年6月1, 2日, シカゴ・メディナ・テンプル
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受賞
1977年米国グラミー賞の「BEST CHORAL PERFORMANCE (OTHER THAN OPERA)」を受賞。
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