このアルバムの3つのポイント
- ベーム67歳のベルリンフィルとの硬派な英雄
- 足しも引きもしない、質実剛健の響き
- アナログ時代の柔らかさ
ベームのベートーヴェンと言えば
20世紀を代表する指揮者の一人、カール・ベーム。ドイツ=オーストリア音楽を得意としたベームのレパートリーの中心にはモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスなどでした。ベートーヴェンの交響曲全集は、1970年代前半にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したものがあり、今でも根強い定評があります。中でも、第6番「田園」についてはこちらの記事で紹介しましたが、ウィーンフィルの柔らかな響きを最大限活かして、素朴で牧歌的な田園の音楽性にマッチした見事な演奏をおこなっていました。
ただ、ベートーヴェンの交響曲全集を録音したときベームは既に70代後半に差し掛かっており、晩年に見られる特徴のゆっくりとしたテンポや自然体の表現で演奏されていて、気迫や情熱を求める方には物足りなく聴こえるかもしれません。
壮年期のベーム&ベルリンフィル
一方で、カール・ベームはベルリンフィルとも継続的に録音をおこなっており、1959年に録音したブラームスの交響曲第1番の演奏は重厚でこの作品の良さをうまく引き出した名演でした。今回紹介する1961年12月のベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」もそうした壮年期のベームらしさが感じられます。
オイゲン・ヨッフムがこの少し前にベルリンフィルを指揮してベートーヴェンの交響曲を録音していましたが(こちらの記事に紹介)、ベルリンフィルの重厚な響きが残っている時代の貴重な演奏でしょう。
足しも引きもしない、素のままの「英雄」
この「英雄」の演奏はベートーヴェンの楽譜に足しも引きもしない感じで、素のままの英雄の演奏のように聴こえます。
第1楽章の冒頭からトランペットが短めのファンファーレをふわっと吹き、楽器のバランスは巧みにコントロールされて、速めのテンポで引き締まった演奏となっています。
第2楽章もゆっくり、そろりそろりと弱音で各楽器がハーモニーを重ね、低音部の重厚なハーモニーの上に、ヴァイオリンとオーボエ、クラリネットの美しいメロディが重なるのですが、このハーモニーが本当に美しいです。ベルリンフィルの力強い金管もよく響きが通っていて力強さもあります。音質はイマイチなのですが、これほど重たい足取りでゆったりとした葬送行進曲はあまり他に聴いたことがないです。
第3楽章も小鳥がさえずるように静かに始まりますが、壮大なトゥッティでオーケストラの力強さが出ています。
そして第4楽章。ここも若干音が割れるような感じがしますが、オーケストラが力強く一つの音楽を生み出して始まります。60年代の時代を感じる重厚感がありますね。足取りはゆっくりとしていますが、非常に力強い音楽を生み出しています。
まとめ
カール・ベーム壮年期の指揮で、ベルリンフィルの良き時代の重厚なサウンドが特徴の力強く、そしてメロディラインがはっきりと出た立体的な響きのする英雄です。
オススメ度
指揮:カール・ベーム
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1961年12月, ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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