このアルバムの3つのポイント
- アシュケナージが盟友ハイティンクとレコーディングしたブラームスのピアノ協奏曲
- オランダのエジソン賞を受賞した、いぶし銀のような渋さのコンセルトヘボウ管による第1番
- 柔らかいウィーンフィルの響きの第2番
アシュケナージのピアノ協奏曲録音
現代を代表するピアニストの一人、ヴラディーミル・アシュケナージは録音も数多く、ピアノ協奏曲についてもほどんどの作品を録音しています。
1970年代以降も、1970年と1971年にラフマニノフのピアノ協奏曲全集をアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団、1971年と1972年にベートーヴェンのピアノ協奏曲をサー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団と、1974年から1975年にプレヴィン指揮ロンドン響とプロコフィエフのピアノ協奏曲全集(FC2ブログ記事)、1975年にユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、1977年にはウリ・セガル指揮ロンドン響とシューマンのピアノ協奏曲(FC2ブログ記事)などを録音してきたアシュケナージ。
指揮者としても兼務してフィルハーモニア管弦楽団を弾き振りしてモーツァルトのピアノ協奏曲全集も録音を進め、精力的なレコーディングでした。
さらに1980年代に入っても1983年にはズービン・メータ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンのピアノ協奏曲の再録音、1984年から86年にはベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲の再録音をおこなっています。
ハイティンクとは、1981年と82年にブラームスのピアノ協奏曲2曲を録音しています。第1番 ニ短調 Op.15が1981年5月のコンセルトヘボウ管との協演で、第2番 変ロ長調 Op.83がその翌年10月のウィーンフィルとの協演です。
第1番をコンセルトヘボウ管、そして第2番をウィーンフィルで、というのがミソですね。作品にベストな組み合わせだと思います。
いぶし銀で実直な第1番
ブラームスのピアノ協奏曲第1番の録音で、私が一番好きなのがこのアシュケナージとハイティンク・コンセルトヘボウ管の録音です。
コンセルトヘボウ管が現在のゴージャスなサウンドと違って渋さがあった時代の演奏ですが、そのいぶし銀のような渋味がこの作品の曲風に見事にマッチしているのです。
80年代以降、アシュケナージのピアノは技術力はそのままながらシャープさよりも力強さが増し、指揮者としての活動も影響して生み出す音色がカラフルになっていきますが、それがこのブラームスの演奏に見事に合っていると思います。
ピアノ協奏曲第1番については、演奏会で情熱的な勢いで押し切って「ブラボー」の喝采を受けた演奏をライヴ録音するということが多いように感じますが、このアシュケナージ/ハイティンク盤はセッション録音で細部までこだわった実直な演奏。まさに職人芸です。
柔らかいウィーンの響きの第2番
第2番は打って変わってウィーンフィルがオーケストラを務めています。こちらもハイティンクと親交の深かったオーケストラで、最後の演奏会となった2019年のザルツブルク音楽祭やルツェルン音楽祭でもウィーンフィルを指揮しています。
ニ短調で悲壮感が漂う第1番に比べて、変ロ長調の第2番は柔らかさと美しさが求められます。ウィーンフィルにはピッタリの作品でしょう。実際にハイティンクが指揮したウィーンフィルからの演奏では、ウィーンの香り漂う素晴らしい響きがします。
第1番ではオーケストラと対峙するような堂々たる演奏をおこなったアシュケナージのピアノは、第2番ではまるでオーケストラのハーモニーに溶け合うようになります。こちらも指揮者としてのアシュケナージの経験がピアノ演奏に良い意味で反映されていると思います。
第4楽章での寄せては返すような旋律で弦が奏でる切なさに心打たれます。
まとめ
ブラームスの個性が対照的な2つのピアノ協奏曲を、ヴラディーミル・アシュケナージのピアノ独奏とベルナルト・ハイティンク指揮で楽しめるレコーディング。私はブラームスの協奏曲ではこのアルバムを愛聴しています。
オススメ度
ピアノ:ヴラディーミル・アシュケナージ
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(第1番)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(第2番)
録音:1981年5月, コンセルトヘボウ(第1番), 1982年10月, ゾフィエンザール(第2番)
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廃盤のため無し。
試聴
受賞
ピアノ協奏曲第1番のレコードがオランダの1983年のエジソン賞協奏曲部門を受賞。
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