猛暑日が続いていて、湿気も高めなので、家にいる時間はエアコンを点けっぱなしでいる日々です。

私はピアノのレッスンには行っていないですが、一人で練習は続けています。日課の練習ではベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」第1楽章〜3楽章とバッハの平均律第1巻第1曲のフーガを弾いていますが、エアコンを点けているとはいえちょっと涼しい気分になろうかと思いまして、今日はドビュッシーの「喜びの島」とラフマニノフの前奏曲Op.3-2「鐘」を弾いてみました。

喜びの島のトリルだけでひんやりしますし、暗い「鐘」も冬向けの曲かもしれませんが、夏にもなかなか良いです。

さて、今日は、2019年に亡くなった指揮者マリス・ヤンソンスのベートーヴェンについて雑感を書きたいと思います。

ヤンソンスのベートーヴェンと言えば、首席指揮者を務めたドイツのバイエルン放送交響楽団との演奏が多いです。2007年から12年にライヴで交響曲全集を完成させていて、2012年の来日公演直前にリリースされました。

ベートーヴェン交響曲全集 マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2007-2012年)
ベートーヴェン交響曲全集 マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2007-2012年)

第九は2007年10月のバチカンのパウル6世記念ホールでのライヴ録音で、ローマ教皇ベネディクト16世の御前で、ホール満場の7,000人の聴衆が聴いたという演奏です。

さらに、ヤンソンスとバイエルン放送響は2012年11月から12月の来日公演でベートーヴェンの9つの交響曲を演奏するチクルスを実施し、日本のミュージック・ペン・クラブが選ぶ「コンサート・パフォーマンス賞(外国人アーティスト)」を受賞する快挙を成し遂げています。第9番のディスクをこちらの記事で紹介しましたが、受賞理由については次のとおりです。

音の早い減衰などピリオド奏法の成果を採り入れつつ、純度の高い響き、精緻なアンサンブルなど、モダン楽器ならではの高い技術と力強さを最大限に活用し、スケールが大きく、輝かしいベートーヴェン像を実現した。19世紀の再現でも、20世紀の踏襲でもなく、(中略)、独自のスタイルで演奏史に新たな1ページを刻んだことに、大きな意義がある。

山崎浩太郎、第25回ミュージック・ペンクラブ音楽賞 決定

そしてバイエルン放送響は、2012年のミュンヘンのヘラクレス・ザールでのライヴ録音と、来日公演でのサントリーホールでのライヴ録音を合わせて2012年の演奏だけでベートーヴェンの交響曲全集(BR Klassik 900119)を完成させています。

コンセルトヘボウとの録音は?

そこで気になるのが同じく首席指揮者を務めていたオランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との演奏。ヤンソンスは同じレパートリーをバイエルン放送響とコンセルトヘボウ管でそれぞれ演奏していて、マーラーやブルックナーではほぼ同じ交響曲の録音がどちらにもあります。

その一方で、ベートーヴェンについてはコンセルトヘボウ管とのものが少ないのです。交響曲では2つしかありません。1つは交響曲第2番で2004年10月のライヴ録音。これはブラームスの交響曲第2番とのペアで、どちらもその翌月の来日公演で披露しています。

もう一つは2008年5月29日のオランダ・コンセルトヘボウでの「運命」のライヴ録音。こちらは元々はヤンソンスがコンセルトヘボウ管の首席指揮者を退任した2015年にリリースされた放送用の音源からCD化されたものに含まれていたもので、後に2020年のベートーヴェン生誕250年のアニバーサリーにコンセルトヘボウ管のプライベートブランドRCO Liveでリリースされた、オムニバスの指揮者によるベートーヴェンの交響曲全集(RCO19005)にも第5番はこのヤンソンスとの演奏が使われています。

マリス・ヤンソンス ラジオ・レコーディングズ
マリス・ヤンソンス ラジオ・レコーディングズ

バイエルン放送響とは繰り返しライヴ録音したヤンソンスのベートーヴェンの交響曲が、コンセルトヘボウ管とは2曲だけ。第5番「運命」はホールの長い残響もあり、コンセルトヘボウらしいベートーヴェンで私は愛聴しているのですが、他に録音が無いのが気になります。ヤンソンスの何かしらの理由がありそうですね。

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