このアルバムの3つのポイント
- シューリヒトとウィーンフィルのブルックナー
- 武骨なありのままで
- ハース版とノーヴァク版をミックス
シューリヒトのブルックナー
以前の記事でカール・シューリヒトが指揮したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との1961年のブルックナーの交響曲第9番の録音を紹介しました。ウィーンフィルとの親交が深く、ブルックナーにも定評のあった指揮者です。枯淡の味わいと評された第9番の演奏は、ブルックナーの音楽から余分なものを削ぎ落とし、心に突き刺さるようで、初めて聴いて強い衝撃を受けたものでした。
同じタイミングで購入したのが、同じくウィーンフィルとのブルックナーの交響曲第8番。ブルックナーの8番は名曲だけに録音も数多く、こちらにまとめていますが。私にとってはこのシューリヒトが19枚目のディスクです。
シューリヒトとウィーンフィルの録音には1963年12月7日のウィーンでのライヴ録音もありますが、ここで紹介するのは、ワーナー・クラシックスからリリースされている1963年12月のセッション録音です。
ウィーンフィルのブル8と言えば
ブルックナーを得意とするウィーンフィルですが、交響曲第8番については録音がかなり多いです。私が聴いただけでも以下のとおりです。
1966年11〜12月:ゲオルグ・ショルティの緊張感あるドラマティックな演奏(ノーヴァク版)
1976年2月: カール・ベームの楽譜に忠実なオーソドックスな演奏(ノーヴァク版)
1984年5月:カルロ・マリア・ジュリーニの長大でしっかりとした骨格を持たせた演奏(ノーヴァク版、レコード・アカデミー賞受賞)
1988年11月:ヘルベルト・フォン・カラヤン最晩年の壮大なスケールの演奏(ハース版)
1995年1月:ベルナルト・ハイティンクのバランスが改善された録音(ハース版、レコード・アカデミー賞&オランダのエジソン賞を受賞)
2019年10月:クリスティアン・ティーレマンの聴手にも緊張感を求めるライヴ録音
書いているだけでそれぞれの演奏が頭によぎるほど、私にとっては全てが思い出深いです。
ありのままの質実剛健
CDジャケットの画像が特徴的なのですが、空は晴れではなく曇り。そして中央に写る巨木が、この第8番の大作を示しているようです。太くて真っ直ぐ伸びているのではなく、幹は左へ右へと曲がってしまっています。そして葉っぱも左右対称に生えているのではなく、バランスが良くありません。
このシューリヒトとウィーンフィルの演奏を聴くと、この絵のイメージとマッチするようでした。第9番は枯淡という感じがしたシューリヒトとウィーンフィルのブルックナーですが、この第8番は壮大なスケールを持っているだけに、同じようなアプローチだと修行僧のように痩せ過ぎてしまっている感じがします。私自身の第8番のイメージとは少し違うところもあります。フォルテでの部分では金管は強調されているのですが、ティンパニや弦・木管はそこまでパワーを出していないので、ギスギスした音になっているところもあります。敢えて武骨な響きを出しているとも感じます。
ハース版?ノーヴァク版?
改定癖のあったブルックナーの交響曲はどの版のスコアを選ぶかで指揮者の意志が伺えますが、シューリヒトは第2稿ハース校訂版を使ってはいますが、独自に削って編集を加えています。ハース版らしいなというところもあれば、ここはノーヴァク版と一緒だなと感じるところもあり、聴いていると色々と発見があります。
意外なのは第3楽章。ハース版だと209〜218小節目に音がその場に漂うようなフレーズがあるのですが、シューリヒトはそこはカットしていて、ノーヴァク版と同じようにしています。
2011年リマスター音源は音質に難あり
私は2014年にリリースされた「2011年リマスター音源使用」の国内盤を聴いていますが、正直、音は良くないです。第3楽章のクライマックスの金管では、パンチが弱いなぁと思ったら次のフレーズになると逆に強すぎるくらいになって、録音バランスがあまり良くありません。第4楽章の冒頭もモヤがかかったような弱音からクレッシェンドしていくのですが、金管が加わり強音になると音質がビビッドになりすぎています。
タワーレコード独自企画でリマスターされたSACDハイブリッドが2019年に出ているので、音質にこだわるならそちらが良さそうです。私はこのCDをタワーレコードの店舗で購入したのですが、そこにはこのSACDハイブリッドは置いていなかったので、唯一あったこの分売の国内盤を買ったのですが、後でオンラインを見たらタワーレコード独自盤があることを知りました。店舗は店員さんの書いたポップを見たり、あれこれ手に取って吟味できるメリットがありますが、昔にリリースされたものしか残っていなくてそれを買ったら、実は新しいリリースがあるのを知ってがっかりすることがこれまでも何回かありました。初めからオンラインで探して発売順にソートして選んだほうが良かったかなぁと反省しています…。
まとめ
武骨な響きを出したシューリヒトとウィーンフィルのブルックナー。スコアの版にも独自性があります。
オススメ度
指揮:カール・シューリヒト
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1963年12月9ー12日, ウィーン楽友協会・大ホール
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試聴
上記タワーレコードの第8番単品のCDで試聴可能。
受賞
特に無し。
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