全集とは別のいぶし銀のブルックナー 交響曲第9番 ハイティンク/コンセルトヘボウ管(1981年)

ブルックナー交響曲第9番 ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年)

このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第9番 ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年)
ブルックナー交響曲第9番 ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年)
  • ブルックナーの交響曲全集とは別の、ハイティンクとコンセルトヘボウ管による第9番のデジタル時代の再録音
  • ハイティンク時代のいぶし銀のコンセルトヘボウ・サウンド
  • 作品に向き合った実直な演奏

ベルナルト・ハイティンクロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、1963年から1972年にかけてブルックナーの交響曲全集を完成させました。さらにハイティンクは1985年からウィーンフィルとも交響曲全集の企画を始めましたが、フィリップス・レーベルの都合で途中で頓挫して、4曲の交響曲とテ・デウムを録音して終えています。それ以降も最後のザルツブルク音楽祭2019でのウィーンフィルとの交響曲第7番まで、ハイティンクは数多くのブルックナーの演奏・録音を遺してきました。

時期としてはコンセルトヘボウ管の全集とウィーンフィルとの全集開始までの間に、ハイティンクはブルックナーの後期の交響曲(第7番から第9番)について再録音をおこなっています。

交響曲第7番(1978年10月)交響曲第8番(1981年5月)については既にご紹介しましたが、今回はいよいよ第9番について書きたいと思います。

ハイティンクは1988年までコンセルトヘボウ管の首席指揮者を務め、その後は首席指揮者が2人体制だったときのオイゲン・ヨッフムを除けば初の非オランダ出身の指揮者リッカルド・シャイー(イタリア出身)の時代を迎えます。

コンセルトヘボウ管のWikiのページに以下のような解説があります。

ハイティンクがシャイー時代のコンセルトヘボウについて「(メンゲルベルク、ベイヌム、ハイティンクと受け継がれた)コンセルトヘボウの伝統の音は失われた。もう戻らないだろう」と語ったという。

Wikipedia「ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」

確かに、1988年までのハイティンク時代のコンセルトヘボウ管の響きと、シャイーが首席指揮者に就いた以降の響きは変わってきています。金管は華やかになり、ハーモニーはまろやかになってきます。

さらに2004年から首席指揮者に就任したマリス・ヤンソンスへとつながり、ここで「極上」と表現されるようなオーケストラの境地に行き着いたと私は思います。

こちらの記事で紹介した、マリス・ヤンソンスが2015年3月に首席指揮者を退任する際のインタビューで、彼はコンセルトヘボウ管について「『コンセルトヘボウ・サウンド』と申しましょうか。信じられないほど透明感があり洗練されていて、とても壮麗でバランスが取れています」と語っていました。

そう「コンセルトヘボウ・サウンド」と言うと今は洗練されているとか壮麗な、という意味に変わってきているのです。

シャイーになってコンセルトヘボウ管のローカルな響きが変わっていったことを私は前向きに捉えています。

とは言え、「いぶし銀」と表現される過去のコンセルトヘボウ・サウンドはどうだったのかと聴いてみるのにこのハイティンクのブルックナーの交響曲第9番は良いサンプルだと思います。1965年のハイティンクとの全集での録音(FC2ブログ記事)、そして今回紹介する1981年の再録音、シャイーとの1996年6月の録音、ハイティンクの2009年3月4日の生誕80年の記念公演でのライヴ録音(FC2ブログ記事)、そして比較的最近のヤンソンスとの2014年3月のライヴ録音とそれぞれの時代の録音が揃っているためです。

そして1981年のハイティンクとコンセルトヘボウ管によるブルックナーの交響曲第9番ですが、デジタル録音ということで全集のときよりも音質は格段に良くなっています。個々の楽器の響きがよく聴こえて、ハイティンクらしいバランス感覚の鋭さを伺えます。

やはり注目はオーケストラの響きでしょう。シャイーとの録音ではビロードのように滑らかな響きでしたが、このハイティンク時代のコンセルトヘボウ管は渋いという表現が合うような、地味でゴツゴツした音がします。ブルックナーの交響曲は、オイゲン・ヨッフムの全集に代表されるような武骨な演奏でも、シャイーの全集のような流麗な演奏でもどちらでもアリだと思えるほど懐の深い音楽ですが、このハイティンクの演奏は武骨な部類に入ります。面白いのは2009年3月のコンセルトヘボウ管とのライヴ録音ではやや流麗に変わっていったところです。

コンセルトヘボウ管の伝統的な音を大事にしつつ、作品に向き合って実直な演奏をおこなったハイティンク。中庸と言われるハイティンクによる、ハイティンク時代のコンセルトヘボウの響きがするブルックナーです。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:ベルナルト・ハイティンク
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:1981年11月11ー12日, コンセルトヘボウ

iTunesで試聴可能。

特に無し。

「全集とは別のいぶし銀のブルックナー 交響曲第9番 ハイティンク/コンセルトヘボウ管(1981年)」への1件のフィードバック

  1. 今回紹介いただいたコンセルトヘボウとの1981年の演奏を通しで聴いたあとに、記事で触れられていたシャイーとの1996年6月の録音も(つまみ食い的に)聴いてみました。ハイティンクのほうは確かに質実剛健というイメージでした。じわじわ来る感じです。シャイーのほうは、例えば、第2楽章の衝撃的なトゥッティの部分などでも、ふっと力を抜いて、おどろおどろしさより美しさが出てくるような演奏に思いました。いろいろ興味深いです。

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