このアルバムの3つのポイント
- チェコ出身の指揮者ラファエル・クーベリックによるドヴォルザークの交響曲全集から第8番と9番
- ベルリンフィルの力強さ
- ローカルに偏らない普遍的な音楽
全集が多いクーベリック
チェコ出身の名指揮者ラファエル・クーベリックは交響曲全集を多く遺しています。ベートーヴェンの交響曲全集は、9つのオーケストラを振り分けていますが、こちらの記事で第9番だけ紹介したマーラーについてはバイエルン放送交響楽団と全集を完成。そして1963年から64年にかけてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とシューマンの交響曲全集を完成させ、今回紹介するドヴォルザークも同じくベルリンフィルと9つの交響曲を録音しています。
私は2018年5月にリリースされたクーベリックのドイツ・グラモフォン録音全集というCD64枚+DVD2枚のBOXを買って、ベートーヴェンとシューマンやスメタナは早くから聴き込んでいたのですが、その後も往年の演奏家の録音が続々と続いてしまい、他は聴けずじまいで棚に置きっぱなしの状態になっていました。新しく買うのをしばらくストップしてみると、腰を落ち着けて聴けるようになってきて、ついにドヴォルザークも聴き込めるようになりました。
第8番と9番「新世界より」ばかりが演奏されるドヴォルザークの交響曲で、全集は珍しいなと思ったいたのですが、調べてみるとヴァーツラフ・ノイマンがチェコ・フィルハーモニー管弦楽団と2回、オトマール・スウィトナーがシュターツカペレ・ベルリンと、イシュトヴァン・ケルテスがロンドン交響楽団というように、数は少ないですがありました。中でもノイマン/チェコフィルの1回目は1973年度の日本レコード・アカデミー賞を受賞しているので、評論家からも高い評価のようです。
それに対して同時期のクーベリック/ベルリンフィルのドヴォルザークの全集は受賞しなかったのですが、やはりチェコの作曲家は本場チェコのオーケストラが演奏するほうが好まれたのでしょうか。
ベルリンフィルによる力強く普遍的な演奏
クーベリックとベルリンフィルの録音では第8番と第9番「新世界より」が同じCDに入っているのでまずそれだけ紹介してみますが、一言で言うとチェコのローカル色を出さずに普遍的な演奏を心掛けている印象。ベルリンフィルの力強い演奏力もあるのですが、第8番第1楽章なんかは序奏こそは旋律たっぷりに奏でるのですが第1主題に貼るとここまで強く演奏するのか、と驚くほど強靭です。のどかなスラブっぽさはないかもしれませんが、ベルリンフィルの完璧なアンサンブルと個々の奏者の高いレベルを活かして普遍的な演奏になっています。第4楽章も冒頭ファンファーレのトランペットが非常に猛々しいです。
今度また紹介したいと思いますがベルリンフィルには1993年11月のクラウディオ・アバドとの第8番のライヴ録音もあり、アバドの初ドヴォルザーク録音だったのですが、スッキリとした響きで歌心に満ちて印象的でした。
第9番「新世界」も力強いアンサンブルで強烈です。クーベリックのこの曲の録音は、ステレオ初期のウィーンフィルとの録音や、晩年の1990年のチェコフィルとのライヴ録音などもあるので、聴き比べてみたいと思います。
まとめ
クーベリックがベルリンフィルと完成させたドヴォルザークの交響曲全集。第8番と第9番は力強く普遍的なアプローチでドヴォルザークの名作を輝かせています。
オススメ度
指揮:ラファエル・クーベリック
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1966年6月(第8番), 1972年6月(第9番), ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
演奏から非常に端正な印象をうけました。自分の中では、交響曲第8番の第3楽章などには、情緒的で、感傷的で、エモい?ものを無意識に求めていましたが、この演奏は真面目でした。録音が50年以上前ということもあって、ヘッドホンで聴くと、全体的にバイオリンやトランペットの高音がキツ目でした。8番で顕著で新世界よりでは改善されていました。