このアルバムの3つのポイント
- ショルティがコンセルトヘボウ管に客演した1991年のライヴ録音
- 機動力のある『春の祭典』
- コンセルトヘボウ管のサウンド
ヨーロッパでの客演増える晩年のショルティ
名指揮者サー・ゲオルグ・ショルティは、1969年から1991年までシカゴ交響楽団の音楽監督を務め、その後は桂冠指揮者として客演やレコーディングを続けました。
ショルティがシカゴのポストを退任することが決まる1990年あたりは、ヘルベルト・フォン・カラヤン(1989年7月没)やレナード・バーンスタイン(1990年10月没)という同時期のスター指揮者が相次いでいなくなってしまい、その穴を埋めるようにショルティはドイツ、オーストリア、オランダといったヨーロッパの名門オーケストラへの客演が増えてきます。
今回紹介するのは1991年9月にオランダのコンセルトヘボウでロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団に客演したときのライヴ録音で、ショルティはストラヴィンスキーのバレエ組曲『春の祭典』を指揮しています。また同じ時期にショルティはコンセルトヘボウ管とショスタコーヴィチの交響曲第1番も録音しています。
晩年のストラヴィンスキーとショスタコーヴィチへの注力
ショルティの『春の祭典』の録音は、1974年5月にシカゴ響とのセッション録音があり、こちらの記事で紹介しました。また、1977年10月のシカゴ・オーケストラ・ホールでの演奏会でロシアの作曲家を取り上げ、こちらの記事でその際にショスタコーヴィチの交響曲第1番も演奏していました。
ただ、晩年のショルティはストラヴィンスキーやショスタコーヴィチに注力するようになり、『ペトルーシュカ』や3楽章の交響曲、そしてこちらで取り上げたショスタコーヴィチの交響曲選集など録音も多くなっています。
ライヴでのハルサイ
シカゴ響との旧録音がオーケストラの機能性を引き出したパワフルな演奏だとしたら、1991年9月のコンセルトヘボウでの「ハルサイ」のライヴ録音は全体的な音楽の流れがより自然になり、コンセルトヘボウ管のノーブルな響きが活かされています。序奏の冒頭のファゴットが伸びやかに奏で、コンセルトヘボウらしいふくよかな木管がその旋律をつなぎます。春の兆しでは規則正しくトゥッティが刻まれ、ショルティらしく厳格なリズムです。
コンセルトヘボウ管からダイナミックな強弱を生み出し、1960年代のマーラーの交響曲でやや生真面目に演奏したこのコンビとは思えない躍動感を感じます。乙女たちの踊りのクライマックスのスケールのすごさ。最後のいけにえの踊りまで、曲想の変化が豊かでまるで一つのオペラを観ているかのような錯覚を受けます。
まとめ
巨匠ショルティがコンセルトヘボウに客演した際の春の祭典のライヴ録音。旧録音とは一味違うコンセルトヘボウの魅力がある演奏です。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音:1991年9月, コンセルトヘボウ(ライヴ)
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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