- ルツェルン音楽祭2007夏でのアバド/ルツェルン祝祭管のライヴ
- 高精細の映像と音声で観られる最高峰のマーラー
- 観衆の22秒の沈黙
ポスト・ベルリンのアバド
クラウディオ・アバドは、2002年にベルリンフィルの音楽監督を辞任した後、自身が設立したオーケストラであるマーラー室内管弦楽団やモーツァルト管弦楽団、そして2003年から芸術監督を務めていたルツェルン祝祭管弦楽団を主な活動に移していった。その間も古巣ベルリンフィルなどとの演奏や録音もあったが、晩年のアバドを語る上で欠かせない存在は、やはりルツェルン祝祭管だろう。
ルツェルン音楽祭の演奏のために編成されるルツェルン祝祭管。それまでヴィンタートゥール交響楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団などのスイスのオーケストラの団員で構成されていたようだが、総監督のミヒャエル・ヘフリガーの提唱によりアバドが芸術監督に就いてからは、「ルツェルン音楽祭のレジデンス・オーケストラとしての芸術性の高さと若手音楽家の育成を両立させること」を目的に編成され、マーラー室内管などの若手メンバーを中心に、ベルリンフィルやコンセルトヘボウ管などの一流のオーケストラから凄腕の団員が集うスーパーオーケストラとなった。
アバドとルツェルン祝祭管との公演は、2003年のマーラーの交響曲第2番「復活」とドビュッシーの交響詩「海」、2012年のブルックナーの交響曲第1番、2013年のブルックナーの交響曲第9番がCD化されているが、ほとんどはCDではなくてDVD/Blu-rayでリリースされている。アバドとルツェルン祝祭管を聴く上では、CDにこだわっていては聴ける演奏が少なくなってしまうし、やはりコンサート映像を見るほうがアバドの指揮ぶりやオーケストラの動きや表情もよく分かって良い。
晩年のアバドはルツェルン祝祭管とマーラーの交響曲を毎年のように演奏していて、第8番「千人の交響曲」を除く第1番〜7番+9番の8曲が、映像作品としてリリースされている。今回は、私が繰り返し聴いているアバドとルツェルン祝祭管のマーラーの交響曲第3番のライヴ映像を紹介したい。
なお、アバドとルツェルン祝祭管によるマーラーの交響曲第1番〜7番、9番についてはこちらの記事にまとめています。
2007年8月19日のマーラーの交響曲第3番
このマーラーの交響曲第3番は、ルツェルン音楽祭2007夏の8月19日の公演で演奏されたもの。本当に深い解釈で、アバドのこれまでの指揮の集大成となっている。
第4楽章のアルト(コントラルトともメゾソプラノとも表記される場合があるが)独唱は、アンナ・ラーション(Anna Larsson)が務めた。真っ赤なドレスで、存在感が際立っている。
至高の第6楽章
この演奏でオススメするのはやはり最後の第6楽章だろう。これ以上の演奏はもう望めないのではないかと思うぐらいに、素晴らしすぎる。美しいのはもちろんなのだが、侘しさもあり、切なさもあり、マーラーが求めた響きをアバドとルツェルン祝祭管が見事に表している。
演奏後の沈黙の22秒
そして第6楽章最後の一音が終わると、アバドは指揮棒をゆっくりと下ろし、胸の辺りで手を合わせている。映像で見るとちょっと目の辺りがうるっとしているようにも見える。そして手を下ろすまでの22秒間、ルツェルン・カルチャー・コングレスセンターで聴いていた聴衆はしんと沈黙して、アバドの様子を見守っている。
アバドの手が下に下りたら、聴衆からは「ブラボー」の掛け声と温かい拍手。聴き手もこの名演を一緒に作っている感じがする。
まとめ
クラウディオ・アバドと信頼するルツェルン祝祭管弦楽団による、現代最高のマーラーの交響曲第3番の名演。これをBlu-rayで高精細な映像と高音質で観られるのは何という幸せだろう。
オススメ度
アルト:アンナ・ラーション
アルノルト・シェーンベルク合唱団(女声合唱団)
テルツ少年合唱団
指揮:クラウディオ・アバド
ルツェルン祝祭管弦楽団
演奏:2007年8月19日, ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(ライヴ)
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試聴
EuroArtsのページで視聴可能。
iTunesで「予告編」をクリックして視聴可能。
Amazon Primeビデオで全曲視聴可能。
受賞
2009年のオランダ・エジソン賞の「DVD Concerten (コンサート)」を受賞。
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