このアルバムの3つのポイント
- 黄金期のシカゴ響の演奏
- 明朗な響きで描くブルックナーの交響曲
- ジュリーニならではの温かいアダージョ
シカゴ響とジュリーニ
イタリア出身の指揮者、カルロ・マリア・ジュリーニは1969年からシカゴ交響楽団の首席客演指揮者を務め、音楽監督のゲオルグ・ショルティとともにこのオーケストラの第2の黄金期を迎えました。
ショルティとの活躍が目立つシカゴ響でしたが、ジュリーニとも素晴らしい演奏を残していて、1976年4月にシカゴ響を指揮して録音したマーラーの交響曲第9番は世界各国の音楽賞を受賞した名盤でした。
そして同年の12月に録音されたのが、ブルックナーの交響曲第9番。この時期はドイツ・グラモフォンとの録音が多かったジュリーニですが、ここではEMI(現ワーナー)との録音です。
シカゴ響のブルックナーの交響曲第9番は
シカゴ響のブルックナーは、金管セクションの音が豊かで、派手で壮大な演奏や、ヴァイオリンをはじめとする弦楽器の美しさが特徴です。
交響曲第9番はショルティと1985年に録音しています。「究極」と評された演奏ですが、私には冬の寒さのように厳しすぎました。また、金管(ブラス)がうるさすぎたのも気になりました。
また最近では2016年にリッカルド・ムーティが指揮したライヴ録音もあり、シカゴ響の文字味である明朗な響きを活かしたブルックナーを聴かせてくれました。ここでも金管のボリュームが気になりましたが。
霧が立ち込めない第1楽章冒頭
このジュリーニとシカゴ響の録音では第1楽章が静寂な中から開始されます。弦楽器がレのトレモロで、ブルックナーの後期の交響曲の特徴である「霧」を立ち込めさせるような始まりですが、ジュリーニはpp(ピアニッシモ)の指示を守って弦、特にヴァイオリンの音がほとんど聞こえません。
指揮者によっては「濃い霧」を発生させるのですが、ここのジュリーニのアプローチはミストにすらなっていない弱い霧です。敢えて劇的効果を狙わなかったのでしょうか。
p(ピアノ)の指示の木管セクションのレの音はフォルテ並に強く吹いています。弦のppと対比して堂々と演奏されていきます。しかし17小節目の弦セクションにクレッシェンドの指示があるところから、弦が一気に力強さを増して、最終的にホルンが主導権を握ります。
再びオーケストラが拮抗するように進む中、59小節目のクレッシェンドからホルンとトランペットが頭角を現してきて、Tempo Iのfffでは完全に金管が頭一つ抜けて最大音量で聴かせます。
ジュリーニはハーモニーのバランスを考えてコントロールしていますが、やっぱりシカゴ響だけに気持ち抑えてもブルックナーを演奏するには金管セクションが強すぎるんですよね。
第1楽章の97小節目のLangsamerに入ってからは穏やかになり、金管があまり登場してこないのもあって慈愛に満ちた旋律で聴かせてくれます。
引き締まった第2楽章、奥行きのある第3楽章
第1楽章で書きすぎたので手短に第2楽章と第3楽章をまとめますと、第2楽章は金管の音色をよく出して引き締まった演奏をおこなっています。
第3楽章では、透明感のあるサウンドで、奥行きがある演奏。穏やかでいつまで聴いていたい第3楽章です。
まとめ
ジュリーニがシカゴ響に任せて演奏させたようなブルックナーで、明朗な響きはありますが、金管が強すぎるところも目立ちます。ジュリーニには1988年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した録音があり、こちらのほうが私は好きな演奏です。
オススメ度
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
シカゴ交響楽団
録音:1976年12月1-2日, シカゴ・メディナ・テンプル
スポンサーリンク
試聴
特に無し。
受賞
特に無し。
コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?