ベートーヴェン交響曲第9番 カラヤン/ベルリンフィル(1976年)

ヘルベルト・フォン・カラヤン シンフォニーエディション
カラヤン シンフォニーエディション
カラヤン シンフォニーエディション
  • カラヤン壮年期のベルリンフィルとの2度目の全集から
  • スッキリとしたスタイリッシュな第九
  • 全集がグラミー賞受賞

さて、今年も残りわずか。コロナ禍で試練、我慢の1年になってしまい、クラシック音楽界にとっても、公演や音楽祭、演奏ツアーがほとんどキャンセルになり、不遇の1年だった。だからこそ音楽の持つ普遍性、希望を再認識でき、特にベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」(第九)は、コロナ禍の鬱憤を晴らす力強さがある。

今年はベートーヴェンの第九のオススメについて紹介する記事(記事はこちら)を前もって書きたかった都合上、第九の録音の聴き比べを11月から開始させたのだが、逆に飽きが来てしまって12月に入ってからあまり聴かなくなってしまった。ただ、年の瀬が迫った今こそ、まだ書いていない録音を紹介しようと思い、集中して聴いている。

今回紹介するのは、ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2度目のベートーヴェン交響曲全集から、第9番「合唱付き」。1975年から77年に掛けて録音された9つの交響曲は、壮年期のカラヤンの求める完璧さと、カラヤンの「楽器」として高い機能性を持つベルリンフィルとの結晶のような演奏。この全集は米国のグラミー賞も受賞している。

カラヤンが4度録音したベートーヴェンの交響曲全集(ベルリンフィルと3回、フィルハーモニア管と1回)の中ではこの70年代の録音が「定盤」として多くの人に愛聴されているが、この第九についてもスマートで聴きやすい。1976年10月、12月、そして1977年1月にベルリンのフィルハーモニーでセッション録音してから、1977年2月にウィーンで合唱部分の追加録音されたようだが、この曲だけで4ヶ月も掛かる慎重さだ。

その割には、録音の質がイマイチなのがいかにもドイツ・グラモフォン・レーベルらしい。ドイツ・グラモフォンは演奏家は指揮者もピアニストも超一流が集まっているのだが、デジタル録音になるステレオ時代の録音は音質がイマイチで、演奏の持つ素晴らしさを伝えきれていない気がする。この第九についても、こもったような音感がして、特に第3楽章のアダージョでは美しさが半減している。

このカラヤンとベルリンフィルの第九の演奏時間は第1楽章が15:27、第2楽章が10:10、第3楽章が16:55、第4楽章のプレストが6:27、声楽が加わる以降が17:55と、合計66分54秒だ。

CD(コンパクトディスク)が誕生したときに、ディスクの直径が11.5cmだと60分、12cmだと74分だが、どちらの規格にするか決める際に、カラヤンがベートーヴェンの第九が1枚に収まる長さのほうが良いと助言して、12cmの規格が採用されたというエピソードがあるが、約67分のこの録音もCD1枚に余裕で収まる。

この第九の特徴は、カラヤンらしい洗練された切り口で演奏されていて、第九を初めて聴く人にも聴きやすい。「苦悩」を表す第1楽章でも、冒頭からもったいぶらずにスピーディに演奏されていく。第2楽章でももたもたせずにさっさと進んでいく。カラヤンの「楽器」と表現されるベルリンのアンサンブルがすごい。

第3楽章ではカラヤンの研ぎ澄まされた感性で、ヴァイオリンの美しいメロディラインを引き出し、低音はコントラバスの音色が土台をしっかりと支える。非常に美しく、「カラヤン美学」という使いやすいフレーズでついつい表現したくなるのだが、それだけでなく、ベルリンフィルの厚みあるハーモニーがこの演奏の魅力である。

カラヤンは第4楽章にピークを持ってきている。おとなしめだが冒頭からキビキビとした演奏で走馬灯のように駆け巡る。声楽が入ってからは、同じ主題が力強く猛々しく演奏され、一気にヒートアップする。そしてバリトン(バス)の力強い歌声で歓喜の歌が始まる。マイクの位置やサウンドバランスの関係だろうが、合唱は大人しく聴こえて、オーケストラの響きと対等になるぐらいの音量にコントロールされている。カラヤンのこだわりだろうか。結果としてオケの音楽が合唱に埋没することなくよく響いている。最後のプレスティッシモでの素速いアンサンブルは見事だが、こもった音質がそれを伝えきれていないのが惜しい。

カラヤンとベルリンフィル全盛期の、美しく厚みのある第九。こもった感じで音質はイマイチだが、聴きやすくてクセも無いので、初めて第九を聴く方にもオススメ。

オススメ度

評価 :3/5。

ソプラノ:アンナ・トモワ=シントウ
メゾソプラノ:アグネス・バルツァ
テノール:ペーター・シュライアー
バス:ジョゼ・ヴァン・ダム
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ヘルムート・フロシャウアー)
録音:1976年10月, 12月, 1977年1月, ベルリン・フィルハーモニー, 1977年2月, ウィーン

iTunesで試聴可能。

この録音を含むベートーヴェン交響曲全集が1978年米国グラミー賞BEST CLASSICAL ORCHESTRAL PERFORMANCEを受賞。

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