カラヤン とベルリンフィルによるR.シュトラウス「 アルプス交響曲 」の3つのポイント
- カラヤン得意のR.シュトラウスの初めてのアルプス交響曲の録音
- じっくりと描き上げる雄大な景色
- ベルリンフィルから引き出した滑らかな美音
R.シュトラウスを得意とした カラヤン
20世紀を代表する指揮者の一人、ヘルベルト・フォン・カラヤンは、リヒャルト・シュトラウス(略してR.シュトラウス)の作品を最も得意としていました。「カラヤン美学」と評された美しさへのこだわりがR.シュトラウスの作品の持つ官能的な美しさにマッチしていますし、複雑な旋律が絡み合うR.シュトラウスの音楽でも、カラヤンの滑らかなフレージングが一見難解に思える音楽でも分かりやすい切り口で披露してくれました。
作曲家は違いますが、1973年のシェーンベルクの「浄夜」の録音でも、カラヤンは磨き抜かれた美しさで聴くものの心を掴んだ演奏をおこなっていました。
意外にも カラヤン の初録音となった1980年の アルプス交響曲
ただ、アルプス交響曲については意外にもなかなかレコーディングされておらず、1980年12月の今回紹介する録音がカラヤンにとって初めての録音となりました。72歳にして初めてとは、だいぶ温めていたわけですね。22曲で51分にも渡る大作なので、カラヤンとしてもじっくりと演奏を重ねてから録音に臨んだのかもしれません。1980年の少し前がデジタル録音が普及したので、この「アルプス交響曲」もデジタル録音ですが、細部まで鮮明に聴こえる音質になっています。
SHM-CDで聴ける アルプス交響曲
私はこの「アルプス交響曲」の録音を2011年5月にリリースされたドイツ・グラモフォンBEST100シリーズでSHM-CDを購入しましたが、2016年9月にも同じくSHM-CDが再リリースされています。SHM-CDは2007年に登場していますが、私が初めてSHM-CDを聴いたのは2008年のこと。こちらの記事で書いたカルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のブルックナーの交響曲第9番でした。普通のCDプレーヤーで聴いても、細部まではっきりと聴こえる音質に驚いたものでした。
この「アルプス交響曲」も第1曲の静かな「夜」から、第2曲の雄大な「日の出」など、強弱や緩急がある作品なので、SHM-CDの冥利に尽きるレコーディングだと思います。
ゆっくりと登っていく アルプス交響曲 の登頂
この演奏を聴いて意外に思ったのが、ゆったりとしたテンポ。もう少し速いテンポで来るかと思ったのですが、第1曲「夜」はゆっくりと始まります。全曲を通じてゆったりとしているのです。一歩ずつアルプスの山を登っていく登山家のように、悠然としています。
フレージングにはあれ?と思うことも
ただ、フレージングは「あれ?」と思うところも何箇所かあります。1973年のマーラーの交響曲第5番の録音の時に感じた、カラヤンが初録音ながらの手探りな感じが、この「アルプス交響曲」でも感じる場面があるのです。「そこで溜めを入れるのか!?」とか「そこでスフォルツァンドのようにいきなり強くするのか!?」などなど。
ベルリンフィルから引き出した美音
ただ、全曲を通じてカラヤン美学は徹底されていると言って良いでしょう。滑らかにレガートでつなげられていくハーモニー、そしてベルリンフィルから引き出されたこの美しさはやはりカラヤンならでは。特に第5曲「小川に沿って歩む」や第20曲「日没」の美しさは格別です。
嵐で荒れ狂った情景を見事に表現
第19曲の「雷雨と嵐、下山」では、カラヤンとベルリンフィルは荒れ狂った情景を見事に表現しています。1976年に録音したベートーヴェンの交響曲第6番「田園」でも、第4楽章の嵐の情景が怖いほどでしたが、この「アルプス交響曲」でも嵐の表現が本当にうまい。天が怒り狂っているような強烈な嵐です。
アルプス交響曲 のまとめ
72歳にしてヘルベルト・フォン・カラヤンの初となった「アルプス交響曲」の録音。ゆっくりと雄大な登頂で、随所に美しさや怖さが現れています。
オススメ度
オルガン:ディヴィッド・ベル
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1980年12月, ベルリン・フィルハーモニー
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【タワレコ】カラヤン/ベルリンフィル R.シュトラウス:アルプス交響曲(SHM-CD)試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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