このアルバムの3つのポイント
- カラヤン3度目、ベルリンフィルとの2度目の1970年代の交響曲全集から
- スッキリと整ったハーモニー
- 交響曲全集が米国グラミー賞受賞と2つにノミネート
クラシック音楽の最初に聴く曲といえば
クラシック音楽を聴いてみようと思ったときに、最初に聴く曲は何でしょうか。テレビCM、ドラマや映画、フィギュアスケートなどのBGMで使われる曲が多いでしょうが、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」は定番中の定番でしょう。
今は音楽を聴くのはストリーミング配信が主流になっている時代ですし、YouTubeでも無料で聴ける動画も増えてきました。以前までのようにクラシック音楽を聴こうと思ってCDを買うのは少ないのかもしれません。クラシック音楽を聴く障壁が小さくなっていくのは良いことだと思います。
私自身は、クラシック音楽を本格的に聴き始めたのはCDを買うところから。最初買ったアルバムはピアニストのヴラディーミル・アシュケナージのショパン名曲集だったのは覚えていますが、管弦楽曲の最初は何から買ったか記憶にありません。ただ、最初の交響曲「運命」の録音は、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の1970年代のものでした。ジャケット写真に「BEST 1000」と書いてあるように、CD1枚で税抜1,000円で購入したものでした。手頃な金額で本格的な音楽を聴けて嬉しかったのですが、今は同じぐらいの値段でストリーミングで1ヶ月間聴き放題ですからね。時代は変わったなと感じます。
こちらの記事で書いたように、ベートーヴェンの交響曲を聴く上で、カラヤンの録音は外せないです。1976年の交響曲第6番「田園」の録音でも颯爽としていました。
カラヤンの70年代の全集の「運命」
苦悩がデフォルメされた演奏かと身構えて聴いてみましたが、スッキリとしたハーモニーで思ったより聴きやすかったという印象。
カラヤンは1950年代にフィルハーモニー管弦楽団と、60年代、70年代、80年代とベルリンフィルとのベートーヴェンの交響曲全集を録音し、映像作品や来日公演のライヴ録音なども合わせるとさらに全集の数が多いですが、この1975年から77年の全集はファーストチョイスに適していると思います。
50年代のスリリングな演奏や、60年代のベルリンフィルとの重厚感、さらに80年代の晩年の厚めのハーモニーなどそれぞれカラヤンのベートーヴェンは特徴的なのですが、70年代の全集はハーモニーが整っていて、非常に聴きやすいです。第九は録音セッションが長期にまたがり、第4楽章までと独唱・合唱が加わってからの流れは分断されてしまう感じがするのですが、第5番「運命」や第7番は本当に良いです。私も色々な年代の演奏家の録音を聴いて、だいぶ耳が肥えてきた自覚はありますが、今改めてこのカラヤンとベルリンフィルの録音を聴き返すと、やはり良いなと思います。
第5番と第7番の組み合わせだと、カルロス・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1974ー76年)や、最近は鬼才テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナの2018年の録音(第5番、7番)などもありますが、初心者でも聴きやすいという点ではこのカラヤン/ベルリンフィル盤のほうが向いていると考えています。
珍しく米国で評価されたアルバム
米国ではグラミー賞がクラシック音楽賞の権威として存在していますが、米国のオーケストラや指揮者を贔屓目な賞であり、日本では「本場」として考えられているベルリンやウィーンの演奏がそこまで評価されません。それなのにこのカラヤンの70年代の交響曲全集はグラミー賞「Best Orchestral Performance」を受賞しました。ベルリンをライバルとしてみなす米国の音楽評論家も唸らせた演奏だと認定されたとのことですね。
一方で、日本ではレコード・アカデミー賞を受賞しませんでした。一方でほぼ同時期の1978〜79年にライヴ録音されたレナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィルの交響曲全集はレコード・アカデミー大賞を受賞したというのに。日本の音楽評論家はウィーンフィルを贔屓しがちな傾向がありますが、当時絶大な影響力があったカラヤンに対してアンチの立場を取った評論家もいたのが影響したのかなと。
まとめ
ベートーヴェンの交響曲の名曲2曲を全盛期のカラヤンとベルリンフィルで堪能できるアルバム。クラシック音楽をこれから聴き始めようとするファーストチョイスにも絶好のアルバムです。
オススメ度
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1976年10月, 1977年1月, 3月, ベルリン・フィルハーモニー
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試聴
iTunesで交響曲全集を試聴可能。
受賞
交響曲全集のアルバムが米国グラミー賞の1979年の「Best Orchestral Performance」を受賞。また「Best Classical Album」にノミネート。エンジニアGunter Hermannsが技術部門「Best Engineered Album」にノミネート。
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