カール・ベーム壮年期の熱気ある第九 ウィーン響とのベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」(1957年)

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ウィーン交響楽団(1957年)

このアルバムの3つのポイント

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ウィーン交響楽団(1957年)
ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ウィーン交響楽団(1957年)
  • カール・ベーム壮年期のウィーン響との第九
  • モノラルでも溢れる熱気
  • 慈愛に満ちた第3楽章

20世紀を代表する指揮者の一人で、いまなお根強く聴き継がれるのがカール・ベーム。オーストリア出身で1894年生まれ1981年逝去。今年2021年が没後40周年のアニバーサリーになります。

実は2019年も生誕125周年のアニバーサリーでそのときも国内盤を中心にCDが再リリースされたのですが、今年はそのとき以上の大型企画が出ています。

1つ目はカール・ベームのデッカ・フィリップスの録音全集。こちらの記事で紹介しましたが、1950年から1972年までにベームがオランダのフィリップス・レーベルとイギリスのデッカ・レーベルに録音したレコーディングがCD38枚プラスBlu-ray Audioが1枚のボックスとしてリリースされました。

カール・ベーム デッカ&フィリップス録音全集のCDボックス展開図
カール・ベーム デッカ&フィリップス録音全集のCDボックス展開図

1950年代の録音はモノラル録音も多く、正直音質はイマイチですが、晩年の演奏とは違った勢いが感じられます。

そして2つ目の大型企画が、ドイツ・グラモフォン・レーベルの管弦楽曲録音全集。こちらもCD 67枚プラスBlu-ray Audio 1枚が含まれる大きなCDボックスでこちらは明日10月15日にリリースされます。

カール・ベームはドイツ・オーストリア音楽を得意としていまして、ベートーヴェンについてもレパートリーの中心でした。第九の録音については、セッション録音が3つ(今回紹介する1957年のウィーン交響楽団との録音、1970年代のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェン交響曲全集での第九、かなり遅くなった1980年のウィーンフィルとの第九の再録音)があり、ライヴ録音も2つ(1963年7月のバイエルン祝祭管弦楽団とのバイエルン音楽祭での第九ライヴや、1963年11月のベルリン・オペラ管弦楽団との来日公演での第九ライヴ)があります。

私はベームの第九は晩年から遡って1980年→1970年と聴き進めて長らく止まっていました。特に1980年のものは極限までゆったりとした演奏で、聴いたときに私がまだ若かったということもありますがもう少しドラマチックなのが良いなと思い、別の指揮者を探求することに。

今年はアニバーサリーということもあり、もっとベームを聴いてみようと思い、1963年のバイロイト音楽祭と来日公演の第九ライヴ録音を聴き、特にバイロイト盤ではこれまでのベームのイメージが変わるほどの衝撃を受けました。

ベームといえば1970年代以降のウィーンフィルとの演奏をよく聴きますが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との1959年10月のブラームスの交響曲第1番の録音も重厚感と推進力が見事でした。壮年期のベームはもっと聴いたほうが良いなと思ったわけです。

デッカ・フィリップス録音全集のCD7枚目に、1957年6月のウィーン響との第九録音があります。元はフィリップスの音源で、残念ながらモノラル録音です。

リマスタリングされたはずですが、モノラルなので音質は良くないですが、この第九はベームの第九で一味違います。1963年のバイロイト盤と似た熱気溢れるアプローチですが、セッション録音ということもありオーケストラの演奏は丁寧です。

この録音は映像でも遺っていて、こちらの記事で紹介した、クリスティアン・ティーレマン指揮ウィーンフィルのベートーヴェン交響曲全集のドキュメンタリーにもちらっと映っていました。白黒映像ですが、階段状になった演奏席にオーケストラの団員がギュッと密になって演奏していたのが印象的でした。それもあって、演奏の密度は高くなっていると感じます。

第1楽章も2楽章も厳かで厳しい表情を見せますが、第3楽章になると打って変わって慈愛に満ちた優しさに変わります。第4楽章の歌手陣はテノールのアントン・デルモータが特に良いと思いました。というのも、歌手のソロでは音質がまだマシになるのでクリアに聴こえるためです。ただ、オーケストラのトゥッティや合唱が入る部分はあちこちのマイクから拾った音をミックスするためか、音質がひどくなっています。

カール・ベーム壮年期のウィーン響との第九。モノラル録音で音質はイマイチですが、溢れる熱気を感じる演奏です。

オススメ度

評価 :3/5。

ソプラノ:テレサ・シュティッヒ=ランダル
コントラルト:ヒルデ・レッセル=マイダン
テノール:アントン・デルモータ
バス:パウル・シェフラー
指揮:カール・ベーム
ウィーン交響楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
録音:1957年6月, ウィーン

iTunesで試聴可能。

特に無し。

「カール・ベーム壮年期の熱気ある第九 ウィーン響とのベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」(1957年)」への2件のフィードバック

  1. iTunes のリンクから全曲聴けました。(Apple Music サブスクしています。)なるほどこの演奏からは若々しさを感じました。とはいえ、これもベームが還暦の時なのですね。指揮者は体力が必要ですね。部分部分であまりためたりせずに進んでいく感じは好みです。第2楽章の展開部でティンパニが唐突に「ダンッダダ」と入ってくるところが控えめで「あれっ」と思いましたが、こういう解釈もありなのかもしれません。管楽器が昔ながらのウィーンタイプなのでしょう、オーボエやホルンなど素朴で温かみのある音色ですが、第2楽章のホルンによる第2主題「クーラリネットちょんぼちょんぼ」などは、バルブ操作が間に合っていない感じが微笑ましいです。第3楽章は美しいのですが、比較的淡々と進んでいく感じで、これがかえって最終楽章への期待を高めます。最終楽章では録音がモノラルだったことも忘れて、もうこの名曲に浸りきっていました。合唱も素晴らしかった。

    1. ムジカじろう

      XIZE様、コメントありがとうございます。
      サブスクリプションに入っていなくてもiTunesで数分の試聴はできましたので、記事を修正しておきました。「Album Only」の記載があって購入しないと聴けないという意味だと勘違いしたのですが、トラック名の左側の再生ボタンで試聴は可能でした。
      この1957年のウィーン響との演奏をベストとする方もいますし、テノール歌手のプラシド・ドミンゴは1980年のウィーンフィルとの演奏「テンポは、実に的確でした。全員を一人残らずコントロールし、ソリストにも、コーラスにも、オーケストラにも正確な出だしの指示を出し、自らの任務に全霊を込めて打ち込むのです。」と高く評価しています。1970年のウィーンフィルとの録音はレコード・アカデミー賞を取っていますし、1963年の日生劇場でのライヴ録音も当時の熱狂を感じます。
      私はベームの第九は5枚聴きましたが、1963年のバイロイト音楽祭での演奏が一番好みですが、壮年期と晩年でまた違った魅力があるのがベームだと思います。自分が年を重ねていくに連れ、また好みは変わってきそうですが。

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