※2022/05/14更新: ヤンソンスの2012年来日公演の録音を追加しました。
※2021/04/09更新: フルトヴェングラーの1951年の録音を追加しました。
2020/11/10初稿
ちょっと気が早いですが、季節は秋から冬へと変わり、ベートーヴェンの第九が聴きたい季節になってきました。第九の録音は数多くあり、名演も多いのですが、どれが良いの?と迷われると思います。
私が聴いてきた中でオススメの第九を紹介します。
フルトヴェングラー&バイロイト祝祭管 (1951年) やはりすごい!定盤中の定盤!
オススメ度:
第九のオススメの録音で必ず挙がると言っても過言ではないのが、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮した「バイロイトの第九」。1951年のバイロイト音楽祭でのライヴ録音で、とにかく生命力がみなぎる演奏です。第4楽章の合唱に入ってからは、イキイキとしていて、今聴いてもただただすごいなと思うばかり。録音が古いので音質が気になるところですが、2010年のリマスタリングではかなりノイズが減って聴きやすくなっていました。
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カール・ベーム&バイロイト祝祭管(1963年) フルトヴェングラーを彷彿とさせる熱演
オススメ度:
20世紀を代表する偉大な指揮者、カール・ベーム。第九の録音についても少なくとも4種類ありますが、私が一番衝撃を受けたのがこのバイロイト盤。まるでフルトヴェングラーを彷彿とさせるように、ティンパニが強烈に鳴らされ緊迫感がある名演です。
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ショルティ&シカゴ響 (1972年) 楽譜に忠実ながらオペラ並のドラマ!
オススメ度:
サー・ゲオルグ・ショルティとシカゴ交響楽団はベートーヴェンの交響曲全集を2回録音していますが、第九についてはどちらも良いです。今回は1972年5月の録音を推奨します。
楽譜に忠実なスタンダードな演奏ですが、このショルティとシカゴ響の第九はオーケストラのすごさ、オペラ並の激動感があり、さらにデッカレーベルが誇る音質の良さもあって、他では聴けない名演に仕上がっています。
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ミュージック・ペンクラブのコンサート・パフォーマンス賞を受賞!マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響のサントリーホールライヴ (2012年)
オススメ度:
2012年11月末から12月に掛けて来日公演をおこなったマリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団。ベートーヴェンの交響曲チクルスで、第九は12月1日の一発録音。ドイツからバイエルン放送合唱団を100名近く呼んだためにコストが掛かる演奏旅行だったそうですが、スポンサーのTDKの支援により実現しました。メゾソプラノはヤンソンスが信頼している藤村実穂子。この来日公演はミュージック・ペンクラブが選ぶクラシック部門 コンサート・パフォーマンス賞(外国人アーティスト)を受賞しました。モダン楽器による演奏で精緻なアンサンブルと透明感ある響きで「19世紀の再現でも、20世紀の踏襲でもなく、独自のスタイルで演奏史に新たな1ページを刻んだ」と評された演奏でした。
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シャイー&ゲヴァントハウス管(2008年) 重たいボールが豪速球で
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待望のリッカルド・シャイーによるベートーヴェンの交響曲全集の中の1枚。全楽章で62分50秒というとてつもない速さの第九なのだが、とにかくテンポが速い。ゲヴァントハウス管の重厚感あるサウンドで、豪速球を投げられている感じがする。「希望も光も無く、第1楽章は始まり恐るべきカタストロフィへと進む」と評した第1楽章は考えさせられる。「音楽史上最高の楽章の一つ」とシャイー自身が評している第3楽章での温かさはお見事。
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ヤンソンス&バイエルン放送響(2007年) ヴァチカン・ライヴでの透き通った極限美
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BR-Klassikからリリースされているマリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団のベートーヴェン交響曲全集には2つあるのですが、2012年にリリースされた全集には2007年10月27日、ヴァチカンでおこなわれたローマ教皇ベネディクト14世を御前演奏の第九が含まれており、7,000人の大観衆を前に、透き通った響きと磨き上げられたアンサンブルで、過不足無い堂々たる演奏を聴かせてくれます。
なお、そして2013年にリリースされた全集には2012年のサントリーホールでのライヴ録音の第九が含まれています。
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ハイティンク&コンセルトヘボウ管(1980年) 珍しいライヴ盤で研ぎ澄まされたバランス感覚
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ベルナルト・ハイティンクとアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(今のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)は、1985〜87年にベートーヴェンの交響曲全集を完成させ、高い評価を受けましたが、第九についてはもう1つレコーディングがあったのです。それが1980年10月のコンセルトヘボウでのライヴ録音で、ライヴらしからぬ落ち着きやハイティンクの卓越したバランス感覚が感じられるのと、ライヴならではの熱さも混じっている、ハイティンク・ファン必聴の演奏です。ハイティンクが指揮すると、個性的ではないかもしれませんが、変なクセが無いので、安心して聴けます。
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ベーム&ウィーンフィル(1970年) ウィーンの香り引き立つ全集からの第九
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カール・ベームは1970年から72年にウィーンフィルとベートーヴェンの交響曲全集をレコーディングしましたが、どれもオーソドックスな解釈でウィーンフィルの美音を引き立てた名演でした。第九についてもスッキリとした美音で演奏されていきます。バイロイト盤のような熱演ではないですが、ベートーヴェンの原点のような演奏でしょう。特に第3楽章の美しさは比類ありません。
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カラヤン&ベルリンフィル(1976-1977年) これがカラヤンだ!
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ヘルベルト・フォン・カラヤンはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と2回目のベートーヴェン交響曲全集録音を1975年から1977年に実施。米国グラミー賞を受賞しています。そこに含まれている第九は計4ヶ月も掛けてセッション録音して、こだわり抜いた演奏です。こもったような音質がイマイチですが、ベルリンフィルの機能性の高さや、第4楽章の声楽加わってから一気にヒートアップする演奏で、第九が初めての方でも聴きやすい演奏です。
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アバド&ベルリンフィル(2000年) 闘病前のほとばしる情熱
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2000年5月1日、ベルリンのフィルハーモニーでのライヴ録音。その後、胃がんの手術のために演奏活動を休止することになったクラウディオ・アバド。ここでは情熱的で圧巻の演奏を聴かせてくれます。
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アバド&ベルリンフィル(1996年) ザルツブルク音楽祭での第九
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1996年4月のザルツブルク音楽祭でのクラウディオ・アバドとベルリンフィルの第九のライヴ録音。アバドの実験的な試行錯誤が感じられる感慨深い演奏です。
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カール・ベーム&ベルリン・ドイツ管(1963年) 日生劇場のこけら落としライヴ
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カール・ベームが1963年にベルリン・ドイツ・オペラとともに初来日公演をしたときのレコーディング。日比谷の日生劇場のこけら落としに『フィデリオ』や『フィガロの結婚』を指揮しましたが、1回だけ第九の演奏もおこなわれました。当時最高峰の歌手陣を揃え、日本の聴衆が熱狂した第九です。1日だけのライヴということもあり、ベルリン・ドイツ・オペラ管のミスもあり、特に第4楽章の金管はいただけないですが、同年のバイロイト盤とはまた違うスッキリとした美音による演奏です。
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バーンスタイン&ウィーンフィル(1979年) 熱いライヴ
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1979年、ウィーン国立歌劇場(シュターツ・オーパー)でのライヴ録音。濃厚で熱いですが、癖があり、万人受けはしませんが、バーンスタインならではの熱狂的な演奏が楽しめます。
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カール・ベーム&ウィーンフィル(1980年) 遅すぎるテンポ!
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20世紀を代表する偉大な指揮者、カール・ベーム。ドイツ=オーストリア音楽を得意とし、ベートーヴェンの録音も数多いです。ウィーンフィルと交響曲全集も録音していますが、今回紹介する第九はそれとは別の1980年のもの。ベーム最晩年の演奏で、全曲が79分2秒も掛かるという遅さ。ファーストチョイスとしては不向きかもしれませんが、年齢を重ねていくにつれこういう味のある演奏も良いなと思えてくるかもしれません。
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ラトル&ウィーンフィル(2002年) 新時代のクセが強い第九
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サー・サイモン・ラトルは2002年4月〜5月にベートーヴェンの交響曲を全曲ライヴ録音しました。21世紀になって間もない録音で、この年にベルリンフィルの音楽監督に就任する飛ぶ鳥を落とす勢いラトルが指揮したということで、この全集は「新時代の幕開け」とも評されたのですが、斬新な解釈で賛否両論ありました。
第九はウィーンフィルらしい雅な美音が聴けますが、テンポを揺らす、急激に弱音にする、最後のPrestissimoでなぜか遅くする、とラトルのクセが強く、好き嫌いが分かれる演奏でしょう。
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