このアルバムの3つのポイント
- ジュリーニ2回目の、晩年のベルリンフィルとのヴェルレク
- アメリカ出身の歌手で固めた独唱陣
- トータル97分の長大な演奏
ジュリーニ得意のヴェルディ、そしてレクイエム
年の瀬を前に怒涛のようにレクイエムの紹介をしてきましたが、今回のヴェルディのレクイエムで一旦区切りを付けたいと思います。次はミサ曲特集とかにはしませんのでご安心を。
今回紹介するのは、イタリア出身の名指揮者カルロ・マリア・ジュリーニが晩年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した録音。
ジュリーニは1980年代後半から90年代前半にかけてレクイエムやミサ曲などのコーラスが入る宗教音楽の演奏が増えてきますが、オーケストラが1986年3月のフォーレのレクイエム(ドイツ・グラモフォン)や1989年4月のモーツァルトのレクイエム(ソニー・クラシカル)はイギリスのフィルハーモニア管弦楽団、この1989年4月から5月のヴェルディのレクイエムはドイツのベルリンフィル(ドイツ・グラモフォン)、1990年と91年のヴィヴァルディの『クレド』とヴェルディの聖歌四編(ソニー・クラシカル)もベルリンフィル、そして1994年のJ.S.バッハのミサ曲ロ短調(ソニー・クラシカル)と、1995年4月のシューベルトのミサ曲第6番(ソニー・クラシカル)はともにドイツのバイエルン放送交響楽団との演奏。
宗教音楽とひとくくりに語っても、ジュリーニはどのオーケストラと演奏するか吟味しているように思えます。
何種類かあるジュリーニのヴェルレク
ジュリーニのヴェルディのレクイエムの録音は1960年代のが何種類が出ていますが、スタジオ録音としてはEMIレーベルでの1964年のフィルハーモニア管との録音があります。それから25年ぶりとなるのがこのベルリンフィルとの録音。
場所はベルリンフィルの本拠地のベルリン・フィルハーモニーと思いきや、イエス・キリスト教会でした。確かにフィルハーモニーでは音が拡散してしまうので、こうしたレクイエムを録音するのに音が発散しない教会での録音のほうが合うのだと思います。
ジャケット写真を見てまず驚いたのは、ジュリーニのお顔。フォーレのレクイエムでは顔写真が載っていなかったのですが、モーツァルトのレクイエムのジャケット写真では少しお年を召したなぁという印象。そしてこのヴェルディのレクイエムのジャケット写真は、それと同時期の録音なのに、だいぶ時間が経っているような写真です。
アメリカ出身の若手の歌手で固めた独唱
このレクイエムでは、独唱が全てアメリカ出身の歌手で固めているのが特徴です。
ソプラノのシャロン・スウィート (Sharon Sweet)は当時37歳、メゾ・ソプラノのフローレンス・クイヴァー (Florence Quivar)は45歳、テノールのヴィンソン・コール (Vinson Cole)は38歳、バスのサイモン・エステス (Simon Estes)は51歳と、ベテラン勢が安定した歌声を聴かせてくれます。
そして合唱はエルンスト・ゼンフが指揮をしたエルンスト・ゼンフ合唱団です。
97分の長大なレクイエム
ヴェルディのレクイエムは巨大な作品ではありますが、サー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団の1977年の録音などトータル81分でCD1枚で収まっているものもあります。
ただ、このジュリーニ/ベルリンフィル盤はトータル97分。CD2枚組に分かれています。晩年のジュリーニらしいたっぷりとした間合いを持たせた演奏で、息の長いカンタービレでヴェルディの旋律を余すことなく伝えています。CD1のトラック2の「怒りの日」でも他の指揮者がやるようにテンポを急に早くしてあおることはせず、少しゆったり目の一定のリズムで進んで行くのですが、ここでオーケストラがベルリンフィルということで金管もパワーがありますし、トゥッティに圧倒さがあります。この部分を聴くだけで、ジュリーニがヴェルディのレクイエムでなぜベルリンフィルを選んだのかが納得が行きます。
まとめ
晩年のジュリーニがベルリンフィルと演奏したヴェルディのレクイエム。トータル97分を超える長大な演奏ですが、オーケストラのパワフルさとジュリーニの息の長いカンタービレが合わさって余すことなくヴェルディの旋律を伝えています。
オススメ度
ソプラノ:シャロン・スウィート
メゾ・ソプラノ:フローレンス・クイヴァー
テノール:ヴィンソン・コール
バス:サイモン・エステス
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
エルンスト・ゼンフ合唱団(合唱指揮:エルンスト・ゼンフ)
録音:1989年4月, 5月, ベルリン・イエス・キリスト教会
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
ヴェルディのレクイエムは、ドラマティックで刺激が強めですね。魂たちが「なんだか面白そうだ」と現世に残ってしまうのではないかと思います。オケも合唱も素晴らしかったです。そして独唱者たちの重唱部分には聴き惚れました。「怒りの日」は、ゆったり目で始まって、途中でもう一段遅くなったように感じました。この曲については、別記事でも紹介されている、ショルティの演奏を前に聴いていたので、それが刷り込まれていたかもしれません。