2021年のクラシック音楽の出来事
2021年もあと1日。今年もコロナ禍で制約の多い1年になってしまいましたが、秋以降の日本での感染者激減で日常を取り戻しつつありますね。世界はオミクロン株で感染者が激増しているのでしばらくは気を緩められませんが、一筋の光が見えてきたのは嬉しいことです。
昨年の今頃こちらの記事を書いて、「2021年のクラシック音楽界は、リッカルド・ムーティ指揮のウィーンフィルのニューイヤーコンサートで始まりますが、新型コロナウイルスのワクチンが流通することでコロナ禍が落ち着き、演奏会や音楽祭が今までどおり開催できるようになれば良いのですが。先が見えない不安さも、音楽のおかげで和らぎましたし、来年も音楽の持つ力強さに期待したいです。」と締めくくったのですが、今年のクラシック音楽の世界でも様々なことがありました。ショパン国際コンクールでの日本人出場者の快挙や、巨匠指揮者ベルナルト・ハイティンクの逝去、そして名門オーケストラの次期首席指揮者の発表があったり、演奏会の正常化で来日する演奏家もいたり、などなど。私見になりますが、この1年を振り返りたいと思います。
ベルナルト・ハイティンク逝去
オランダ出身の指揮者で、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者を長年務めたベルナルト・ハイティンク。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ボストン交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、シカゴ交響楽団などのポジションを歴任し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団などとも良好な関係を築き客演をおこなった名指揮者は、2019年に90歳で指揮者から引退していましたが、2021年10月にオランダのご自宅で逝去されました。こちらの記事で紹介しましたが、世界各国から追悼文が贈られ、改めての人望の厚さや人気の高さを伺いました。
ショパン国際コンクール
5年に一度の開催で2020年に予定していたショパン国際コンクールはコロナの影響で2021年に延期に。今年10月にポーランドのワルシャワで予選と本選がおこなわれましたが、日本からの参加ピアニストも多かったですし、予選・本選の演奏をYouTube(Chopin Instituteアカウント)でのライヴ配信していましし、ピアニスト自らTwitterなどのSNSで発信することもあり、オンラインでもこれまで以上に盛り上がったコンクールになりました。
そして、反田 恭平さんが2位タイ、小林 愛実さんが4位に入賞しました。日本からの参加者で2位になるのは、内田 光子さん以来の51年ぶりの快挙でした。優勝したブルース・リウの上品さと即興性も見事でしたが、ショパンをどう自分なりに表現するかに全力で向き合ったピアニストたちのレベルの高いコンクールでした。
コンサートの正常化
マスク着用や掛け声NG、客席ごとの段階的な退場など、まだまだ制約はありますが、客席間を空けずに着席しているコンサートもあり、昨年に比べると今年の演奏会は正常に戻りつつあったと思います。
去年はキャンセルが相次いだ演奏家の来日も、今年は少し回復しました。
昨年も厳戒態勢で来日したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は今年はニューイヤー・コンサートでも指揮を取ったリッカルド・ムーティと来日。また世界的ピアニストも、ダニエル・バレンボイム、ルドルフ・ブッフビンダー、ラファウ・ブレハッチ、エフゲニー・キーシン、クリスチャン・ツィメルマンなどが来ています。
私はワクチン接種のタイミングから、12月以降にコンサートに足を運ぶようにして、クリスチャン・ツィメルマンのピアノ・リサイタル@所沢(感想はこちらの記事)と福間 洸太朗さんのピアノ・リサイタル@小平にも行ってきました。
レコーディングをじっくり聴くのも好きですが、目と耳を集中させて1回しか聴けない生演奏を味わうのも格別ですね。来年以降もなるべく多く行けるようにしたいです。
名門オーケストラの次期・首席指揮者決まる
オーケストラの音楽作りの方向性を決めるのに重要なのが、首席指揮者。今年は名門でいくつか次期首席指揮者の発表がありました。
バイエルン放送交響楽団はマリス・ヤンソンスが2019年に急逝されてから首席指揮者のポジションが空いたままになっていました。ようやくその後任がサー・サイモン・ラトルに決まりました(紹介記事)。ラトルはロンドン交響楽団の首席指揮者に就いていますが、そちらは契約を延長せずサー・アントニオ・パッパーノが後任になる予定です(紹介記事)。また、NHK交響楽団はパーヴォ・ヤルヴィの後任としてファビオ・ルイージが次期首席指揮者に就任することが発表されました(紹介記事)。
名門オーケストラと名指揮者たちの次の時代に注目したいです。
レコーディングの新規リリース
コロナ下で演奏活動に制約はある状態でしたが、今年もレコーディングの新規リリースが続々とありました。
今最も勢いのある指揮者と言っても良いアンドリス・ネルソンスは、ボストン交響楽団とショスタコーヴィチの交響曲全集を進めていますが、その第5弾となる交響曲第1番、14番他がリリースされました(紹介記事)。また、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とはブルックナーの交響曲全集を並行して進めていて、その第5弾の交響曲第2番と第8番のアルバムがリリースされました(紹介記事)。
また、伝統的なスタイルを重んじるドイツの指揮者クリスティアン・ティーレマンもウィーンフィルとブルックナーの交響曲全集をレコーディング中で、その第2弾の第3番「ヴァーグナー」、第3弾の第4番「ロマンティック」のライヴ録音も今年リリースされました。ツィメルマン&ラトル&ロンドン交響楽団のベートーヴェンのピアノ協奏曲全集やドイツの巨匠ピアニストのルドルフ・ブッフビンダーが5人の指揮者と5つのオーケストラと協演したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集、鬼才指揮者のテオドール・クルレンツィスとムジカエテルナのベートーヴェンの交響曲7番、コンサート活動から引退した指揮者兼ピアニストのヴラディーミル・アシュケナージの久しぶりの新譜のバッハのイギリス組曲の新譜などもありました。
ビュー数の多かったトップ30の記事
さて、このWebサイトCompass of Musicで今年1年でビュー数が多かったトップ30の記事を紹介します。
Compass of Musicの2021年ビュー数トップ30
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- 割れる評価? ティーレマンとウィーンフィルのベートーヴェン交響曲全集
1〜4位、7、9位はレコーディングの名盤を調べて読んでくださった方が多いので上位に来ています。今年はハイティンクが逝去されたということもあり、ハイティンクの演奏を振り返ろうと関連記事の5、6、20、25位がよく読まれた傾向があると思います。まだまだハイティンクの演奏は紹介しきれていないのも多く、私自身も書きたいのですが他の演奏家も紹介したいというジレンマに悩まされています。
上位の傾向を見るとベートーヴェンとブルックナーが比較的多く、今後記事を書く上で手集めになるよう考慮していきたいです。
振り返って
Compass of Musicは2020年9月に立ち上げたのですが、最初は検索エンジン対策の設定が間違っていて、書いてもまるで反応無しという状況が続いていました。とにかく記事数を増やそうと思って1日1記事書いていたときもありましたが、1つの録音をきちんと紹介するのには1日で書ききれないことも多く、途中からペースを落としたそのおかげで1つ1つの演奏と向き合うようになれたと思っています。
来年2022年はベルギーの作曲家セザール・フランクの生誕200周年と、ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンの生誕150周年に当たります。紹介したい名曲もあるのでそれも軸にしつつ、なるべく多くの作曲家、演奏家の名演・名盤を紹介していければと思います。
それでは皆様、よいお年を。
ムジカじろう
コメント数:1
こちらのサイトに巡り合ってからまだ3か月ほどですが、記事を頼りに、自分の中のクラシックの世界が少しずつ広がってきたように感じます。また、休日の癒しの時間が習慣として定着しました。ありがとうございます。これからも過去記事も含めて、拝読させていただきます。